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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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夜の来訪者20101201夜



「…でっかいお屋敷じゃけぇ…」
「此処は病院ですよ。僕の仕事場です」
高さにして12階立て。当直の医者だけで何千人という規模を誇る病院は、広さでもシティで随一だ。
「夜間の急患受け入れも、専門的な高度医療もここでなら受けられます。国内最高峰の病院なんですよ」
「ワシが知っとる病院とは規模が違うけぇ。此処に来て目を白黒させとる」
「初めて来る患者さんも、良くそう言われますよ」
ふふっ、とシロが笑ってタイガへと視線をやった。大きな彼の身体は存在感がありながら、落ち着きがある。威風堂々という言葉が最も似合いそうだ。
「それじゃぁの、シロ。肩はしっかりと固定して動かさんようにな」
「え、もう行っちゃうんですか?夜も遅いですし、泊まって行ったらどうです?」
シロの提案をタイガは笑い飛ばした。
「残念ながらレントラーは夜でも活動出来るじゃけぇ、森にワシがおらんかったら誰が怪我したモンを見るけぇ?」
「あ、そう…ですか。そういうことなら、呼び止めてすみません」
「いやいや、シロは優しいけぇ。また時間が出来たら遊びに来る」
シロは立ち上がるタイガにそんなことを言われ、嬉しいようなくすぐったい気持ちで微笑んだ。
その時、シロのポケットの通信端末が鳴り響いた。
「…どうしたけぇ?」
「どうやら急患のようです」
シロは素早く電話に出ると、すぐに情報を得た。
「北部戦線で戦闘があり、数名の怪我人が運ばれて来るようです。恐らく、4、5人でしょうと…」
「それは大変じゃけぇ。すぐ、状態を見んと!」
シロはすぐに頷いてタイガの背中に跨がると、外へと向かった。

ER(救急救命部)の当直に居た者は人間ポケモン問わず約50人。全員が外の広場で北の空を睨んでいた。
「全員が恐らく瀕死の状態でやって来る見込みです」
「戦闘……」
タイガがシロへと小さく呟いた。嫌な予感がするけぇ、と。
その理由を聞こうとシロが口を開いたが、その前にタイガが続けて言葉を漏らした。
「来た……、……シロ、どうやら嵐になるけぇ」
シロも続けて空を睨んだ。
暗闇にサーチライトの光が点ると、その言葉の理由がわかった。
背中に怪我人を満載した翼を持つポケモン達の大編隊が照らされたからである。

「戦闘はかなり激しいんです!申し訳ありませんが、一人でも多くの兵士を救ってやってください!」
竜使いの青年が満身創痍の兵士達を下ろした竜に跨がり空へと舞い上がった。すぐに戻り、新たな怪我人を連れて来るのだろう。
シロもタイガもそれからは呼吸する隙さえない急がしさだった。
運ばれて来た患者は約100人でこれからどんどん増えるだろう。一方で手術室は限られていた。
そうなれば、緊急度の高い患者からの手術である。
識別救急。所謂トリアージである。
患者にはトリアージタグと呼ばれるシールが次々に貼られていく。状態には10段階あり、4色で色分けされている。9~7の緑は軽傷の患者。6~4の黄色は緊急を要しないが病院で検査をうけるべき患者。3~1の赤は緊急に病院へ搬送しなければ生命の危機がある患者。そして、0の黒は処置をしても助かる見込みのない者…或いは死亡した者である。
次々に医師がトリアージを開始するが、既にこの患者達は赤をつけられたのである。誰もが緊急を要する患者で困惑する中、シロとタイガは冷静に患者を判断していく。
「このヘルガーはすぐに止血を!搬送は後に回して!そっちの人間は37番手術室へ!急いで!」
「…シロ、もう手術室が埋まる。そろそろメスを握る時間じゃけぇ」
「タイガさんは?」
シロは彼へと振り返る。タイガは、小さく首を振って。
「まだ識別が終わってないじゃろが。ワシがこの後を引き受けるけん、行って患者助けて来い!」
「……わかりました、後は任せます」
タイガがこくりと頷き、患者へと向かう。
シロは通信端末で手術の連絡を入れる。ところが…。
「……麻酔医が居ない?」
シロは思わず端末を強く握ってしまう。
麻酔医とは麻酔を患者に掛け、その後は手術中に患者の状態を把握し、薬によってコントロールする仕事を受け持つ医者だ。
その麻酔医が居ないということは、すなわち手術が出来ない事を意味する。
「……わかった、麻酔医抜きでやろう。僕のチームを50番へ」
ピッ、と通信を切った。
しかし八方塞がりの状況に変わりは無かった。
「…シロ、大丈夫やけぇ?顔が真っ青や」
気付けばタイガがこちらへとやって来てくれていた。
「え、いや…その…」
「麻酔、できるのがおらんのか?」
話を聞かれていたらしい。こくん、と頷いた。
タイガは牙をニッと見せながら。
「よっしゃ、麻酔やったるわ」

「麻酔…本当にできるのかな。そのタイガってレントラー…」
「…わからないけど、この患者相手に麻酔なしで挑むのは負け戦になるのがわかってるようなもんだ」
「どのみち、このメンバーが集まるんです。患者がまともな状態のはずがない…実際、黒判定を受けてもおかしくない患者です」
「ま。俺は最速で切っていくだけさ」
4人の執刀医が通路を歩く。
消毒された両手を肩まで掲げ、手術着に看護師の手によって着替えさせられる。
「手術の成功を祈っています」
そんな言葉と共に手術室へやって来た。
「患者は既に眠らせたけぇ。状態は安定しているが、長くは保たん。患者は20代雌のボーマンダ!脚の開放骨折!肺に刺さった肋骨の除去!心破裂!」
「ルバートは心臓を、フィノとスピネットは脚の処置を。僕は肺をやる」
了解、と銘々に返事が返ってくる。
優に6、7メートルはあるそのボーマンダを相手に、シロは電気メスをオペ看に要求した。

「キシラーデを分0、2メック側管注。体温を17度に安定…ルバート、大丈夫けぇ?」
早い、とタイガが唸る。
このチームは最速の医師が集まっているだけある。そう感じはじめたのはオペ開始から1分だ。
切開を最低限で済ませ、処置を行っていく彼等を見て思ったのは、さすが音楽をしているだけあって連携が取れているということ。
「…大丈夫だ」
ルバートが返す。彼の掌にある心臓は大きくずたずたに裂けていた。裂けた場所から噴いた血がルバートの服を汚していく。
心破裂とはその名の通り、心臓が強い圧力で破裂してしまうこと。心臓を包む心膜にメスを入れた瞬間にどばりと溜まった血が溢れる。
これを並外れた早さで直接裂けた心臓部位を縫っていかなければならないのだが、問題もある。
患者は大きなボーマンダである。心臓の大きさも人間のそれと比べものにならないほどに大きく、軽くスイカのようだ飛行するポケモンに共通する事だが、心筋が分厚いのだ。この並外れた心筋で体中に血液を巡らせ、パワフルに飛行するのだろう。
お蔭様で縫合するルバートは汗を何度もオペ看に要求した。
「裂けていただけで幸いだったな」
そう横目で話し掛けるスピネット。彼は骨の飛び出した状態の開放骨折を処置していた。
骨を元の位置に慎重に戻し、骨に拒絶反応の起こらない素材で作られたビスを埋め込み固定するのだ。
その他にも脚には多くの太い血管があり、それを繋ぐ手術も並行して行われた。これはフィノの仕事だ。
脚を失えば、大きくこの患者のQOL――クオリティオブライフ、手術後の生活に支障をきたすことになるだろう。
「スピネットも脚の処置が終わったらルバートを手伝ってあげて…こっちももう終わる」
肺に肋骨が突き刺さっている。そんなシロの部位はまるで魔法のような速さで処置が進められた。
「後は心臓だけ…」
タイガが呟いた。その後も指示を素早く飛ばす。
この4人の執刀医は全員が全員同じ事を思っているはずだった。
それは、この患者が未だに生きているということ。
普通、メスを入れられてしまえは人間であろうとポケモンであろうとあっという間に死んでしまう。元々かなりの痛手を負っていたのなら尚更だ。
しかし、それでも生きているということは、患者全体を見回してその状態を把握し、常に弱った部位に薬を投与したり、適切な行為で負担を軽くする。それが麻酔医の仕事だ。
言葉では簡単に示すことができるが、実際に誰かを診るということは相当の経験と知識とが必要となる。
タイガはそれを兼ね備えた凄い医者なのだと、そう思った。
「オペ終了!」
からん、と胸を閉じた縫合糸を切った鋏が床に落ちると同時にシロの言葉が響き渡った。

そんな嵐のような夜を過ごし、朝日が昇る。それでもタイガは休むこと無く元の世界へと戻って行った。

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年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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