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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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SS.エピローグ

 

シティによって俺達は創られた。クローン兵として、初めから戦うために生まれたのだ。様々な能力の付加、異種への変化はそう考えれば全てが納得のいく問題だった。
俺達はつまり、死ぬために生まれてきたのだ。
それを知ったのは4年も前の事。俺達はシティの軍内で反乱を起こし、当時20歳未満の全ての者が脱走した。
そして俺達はシティからの攻撃に反撃した。
本当はこの間に様々な出来事があるのだが、簡潔に話せば戦争が始まった経緯はこうなる。

「シロはこれから如何するんだ?」
「僕は、やっぱり医者であり続けたいな。 ……シティで、高度な医療を学ぼうと思う」

親なんて存在は無い。
それでありながら兄弟を名乗っていた俺達は、つまり究極の幼馴染といったところであろう。
それも戦争という糸が切れれば、兄弟では無くなってしまうのだろうか。
クロは若干の寂しさを覚えた。

「……そうか。 お前なら、きっと凄い医者になれると信じてるよ」
「兄貴の口からそんな言葉が飛び出すとはね。 ……思っても見なかった」

シロが笑う。
俺が思っていた以上に、戦争で結ばれた信頼や友情は強く俺達を結び付けていたらしい。

「姉さんは最高の竜騎士になるために、山で竜と一緒に暮らすんだってさ」
「ガルクはジュンと一緒に新聞記者になった。スラッガーは今年も野球を全力で頑張るらしい。スプリットは艦長まであと一歩で届く場所だ」
「リリーフとコールドは寄り添って生きていくって。 ディトは……結婚式が終ったら、ルナと一緒に過ごしたいって言ってたよ。 ルバートは医療に夢中だけど、またグレイスに何か言われたら恋が燃え上がりそうだね。 フィノは……レンと一緒になりたいんじゃないかなぁ」
「……ギディオンは島に住むっぽいな。 トールはどうなるだろうか……一番のミステリーだ。 カマルは、群れがあるからこれまでと何ら変わらない生活になりそうだな」

彼らも、俺と共に歩んできた道のりは長い。
その間に得た物も、また多いようだ。
島に来て5年が経った。振り返れば長いようで短い期間だった。

「それじゃぁ、僕は行くよ。……時々連絡するけど、兄貴も元気で」
「わかってる。 ……じゃぁな」

そして、今。俺達は別々の道を歩き出す。
さよならは言わない。何かの唄にあったようにこの別れは始まりに過ぎないのだから。

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SS.キュリアス訪問記


私はキュリアス。キュウコンだ。
普段はまだ幼さの残る齢18歳のトレーナー、ルビーと共に毎日を過ごしている。
彼女は私に優しく、時折頼られる。そんなどこにでもあるトレーナーとポケモンとの関係だが、私もルビーが大好きで特別な存在だ。
と、声を出すことは恥ずかしくてとてもじゃないが出来やしない。だが、彼女もきっと言われてみたい言葉だろう。


「キュリアス、いいお湯だったねー」
「……うむ」
「シャンプーがあると、もっと良かったんだけど……」
今居るのはルビーの家があるサンタウンではなく、クロの世界だ。元々戦争をしていたような場所にシャンプーは期待できない。ルビーもそれを知っているかのように、しかしそれでも残念そうに呟いた。
クロの住んでいるという、元々基地だった施設は広かったが人気は少なかった。ちょうど霧を抜けた辺りで夕暮れになりかけていたので、少し早い風呂に行ったのだ。
少し歩いたところに、島と同じように自然の温泉があるのでそこに向かった。ルビーはいつものように私を洗ってくれた。そして、若干熱めのお湯に悪戦苦闘していた。
クロはその間に夕飯の下拵えをすると行って建物に残っていた。
今は肌寒い中、ルビーと共に建物へと戻る最中だ。
「ねぇキュリアス。あたしと同じくらいの子供がやる戦争って、なんだかイメージ沸かないな……」
「……私は戦争そのものが良く解らない」
「そうだろうね。あたしだって、正直何でクロが銃を背負ってたりするのか、わからないもん」
今や戦争も終結し、平和になりつつあるこの世界。半年前はこの場所にも何千人という少年達とそのポケモン達が敵の攻撃に震えていたのだろう。
その事実は私やルビーを否応無く考えさせる。
クロは戦争の理由を「生きるため」と言っていた。そしてその口調は誰よりも戦争の事を知り、それを憎んでいるように思えた。
「……解らないかもしれないが、考える事を止めてはならない。考え、戦争に対して1つの考えが持てれば、クロが今生きている理由になる」
私はそのように結論付けた。
ルビーは私の頭をそっと撫でて、肯定の短い言葉を呟いた。



「ただいま、クロ」
「おう、おかえり。どうだった?俺の世界の自然は」
「真っ暗で何も見えやしなかったよ。 まさか、本当に松明持ってお風呂行くなんて思ってなかった」
ルビーの言葉にクロは苦笑した。
この辺りは私は光を感じる目を持っていないので何とも言えない。
話を聞きつつ、部屋の奥にある暖炉の傍に寄って体を伏せた。
「でも、空気が凄く綺麗なのは感じたなー!あと、空の星!サンタウンで見た時よりずっと綺麗に光ってた!」
「そうだろう!この自然はどの世界にも負けないと自負してるからな!」
少し興奮気味に話すルビーにクロも満更ではないようだ。



夕飯は、あまり食べたことの無い味の肉をふんだんに使った肉料理だった。
普段はポケモンフーズを食べる(ここだけの話だが、ルビーは普通のポケモンフーズより2ランクは上の高級品を私達に食べさせる。また普段からコンディションをよくするためにポフィン等も食べさせてくれるのだ)のだが、このような肉料理は嫌いではない。
だが、ルビーはあまり口に合わないようだ。
「……あんまり美味くないか?」
「ううん、美味しいよ。ただ、味に慣れてないだけで」
「これは竜の肉なんだぜ?」
ルビーは驚いたようにその言葉を反芻した。
「そう。まぁアレだ。ポケモンで言うミルタンク的な竜がこの世界には」
「クロ、食事中だ」
ルビーの気持ちを考えない発言に思わず突っ込んてしまった。後悔はしていない。
クロも素直に謝ると、ルビーは改めて話題を出した。
「今此処にはあたし達だけなの?」
「いーや、何人か居るよ。……しかし、なんでだ?」
「うぅん、別に……何でもない」



食後、私達は部屋へ戻った。
その道中に一匹のキュウコンと擦れ違うが、クロも私も気付かないふりだ。なぜなら、それはルビーにとって気づけない存在……つまり、幽霊だからだ。
「クロ、気付いたか?」
「知っている。……だが、ルビーには言わないほうが良い」
ごもっとも。
小声で話す私達にルビーは怪しんだように声を掛けたが、ごまかすことに成功したようだ。
「あ、コールド」
「おう。さっきの話の続きを聞こうと思ってな」
さっきの話、というのはカフェで話した私の昔話だ。
先に入室していたコールドを感じると、そちらへと一礼した。

今年で1300年と30年を生きるキュウコンが居る。私はそのキュウコンを慕っていた。しかし、ある時人間がファイヤーを狙い私達の居る灯山へ入って来た。そもそも私達の住むべき場所はそのような存在が訪れる事はない。故に彼女は強い邪念に晒され、弱った。私達は途方に暮れたが、彼女が昔私に教えてくれた霊薬の存在を思い出した。霊薬を持っているのはアブソルであり、無論それをただで譲ってもらう訳にはいかない。だから私は光を失う代わりに彼女を救ったのだ。
と、簡単に説明したつもりが随分と長くなってしまったらしい。途中から飽きて、ルビーとクロは利き耳を立てていれば、竜伝説の話なんかを別に話していた。最後まで聞いていたのはコールドだけだ。

「……興味深い話をありがとう、キュリアス。また君の世界にも行ってみたくなった」
「礼には及ばない。また、機会があったら案内しよう」

コールドは一礼し、部屋を出て行った。どうやらこの後も仕事があるらしい。
話で盛り上がっているクロとルビーを横目に、私はベットに伏せると瞳を閉じて、眠りについた。

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SS.ある高校生の一日



僕ら高校生はケータイの音には無駄に敏感な生き物だと思う。枕元に置いてあったそれが鳴ると、たとえ夢の中でもすぐに覚醒することができるのだから。

「ん……」

すぐ枕元に置かれたそのケータイを開く。聖也からのメールだ。

『今日は風邪って事にしておいてやったから(・∀・)ゆっくりとクロの背中で寝るといいぜ!(笑)』
「……クロさん!?」

ガバッと起き上がる。見慣れない部屋と上半身裸のクロが目に飛び込んできた。
僕は慌てて布団の中に舞い戻った。頭から被ってクロの適度に絞られた身体を見ないように努める。

「別に男同士なんだから見るのを拒否せんでも」
「今何時ですかっ!?」
「ケータイあるだろ。……まぁ、9時くらいだな」
「……、……」

最悪だ。学校は今から走っても遅刻は確定。サボったことなんて一度も無いから免疫が無い。そう考えるだけで胸がドキドキした。
でもこうなっては仕方が無い。覚悟を決めて布団から起き上がった。

「……!」

真っ白な制服に袖を通すクロ。それが軍の士官服だと梓もなんとなく分かった。
普段から黒に身を固めている彼だから、尚更そのギャップが激しい。これはこれで非常に似合うと梓は思った。

「そんなに不思議そうな目で見るなよ。こっちじゃ意外とこんな服も着るんだぜ?」
「……そうなんですか?」

あぁ、とクロは頷く。

「今日俺出掛けるし、訳ありで基地に殆ど誰もいなくなる」
「……はぁ」
「服はそこに俺の小さくなったやつで悪いけど用意してあるから」
「……はぁ」
「なんか食いたくなったら食堂行きな」
「……はぁ」
「そういうわけで、留守番宜しく」
「Σえぇっ!?」

一緒じゃないの!?なんて叫んでみたら、これから調印式に行くらしい。そこに梓は連れていけないと丁寧に拒否されてしまった。その前に調印式に行くくらい凄い人なのクロさん……。
そのままクロさんは外へ消えてしまった。
一人で残されてるのもなんだか虚しい。一日中何をやっていても良いらしいけど、逆にこんな異世界で何をやれば良いんだろう。
なんて考えた所で枕元に伏せた写真楯が置かれていた。
伏せている、ということは見てはいけないこと。それくらい分かっているつもりなんだけど……。

「……」

見てしまった。
多分、今から10年くらい前のクロさん。
そして、その傍らに居るのは両親……だろうか。
写真にレシフィールさん、シロさんは居ない。年齢的に考えて居なければおかしいのに……。
何故だろう。本当に見てはいけないものを見てしまったようで。学校に行かないのと同じくらいの罪悪感を覚えてしまった。



ベッドから出て着替えた。クロさんのお下がりと言われたその服はやはり真っ黒で。それでも若干大きいような気がした。
お腹が減ったので部屋を抜けて食堂へ向かうものの、広くて良くわからない。
ただうろうろと歩き回ってる間、見ず知らずのポケモンだけが廊下を擦れ違っていく。

「皆強そう……」

バシャーモ、ルカリオ、ニドキング。あまり街で見掛けることが少ない種族のポケモンがゴロゴロ。しかも図鑑で見るより大きな個体ばかりのように思える。……そういえば、クロさん達の仲間も普通より大きかったような。

「でも、琉川さんはあんまりこっちでも見栄えしない大きさだったよねー?」

足元をゆっくりと動く零央。子供だから僕よりも小さいラプラスだ。

「んー……なんでだろうね?」

よくわかんない。そうごまかした。



二人で寒い空気の中を歩いてると、やがて食堂にたどり着く。
しかし、ものすごく広い食堂には誰も居ない。何か食べれると期待していたけど、どうやらそんな空気では無いようだ。

「あ、良いものみっけv」

零央が壁に貼り付けられた地図を見つけた。
どうやら現在地は地図の真ん中にある建物、らしい。
そして周りには……

「森と、山と、湖しか無いや……」

山に囲まれ、その中心には森が広がり、北から流れ込む川でこの建物の東側には湖が広がっているようだ。
人工的に作られた建物はここだけらしい。



そんな経緯を経て、湖へ行ってみる事にしたのだ。
建物を出て、広場で戦うポケモン達を横目に東へ。森の中に一本の道があり、木のトンネルを僕らは歩いた。
普段住んでるところは都会に近い田舎だけど、此処は田舎とかそういうレベルじゃない。全く人間の手が及んでない、そんな表現の仕方が適切なくらいに自然のありのままの姿だった。
同時に水道、ガスが無いのは少し不便だなとも思う。だけど、耐えられない程度ではないかな。

「……梓!」

零央の声と同時に、綺麗な湖が広がっていた。
とても寒いせいかうっすらと表面に氷が張っている。
そして湖の淵に浮かぶ見慣れた姿があった。

「あ、コールド……」

さん、の言葉が浮かばなかった。
湖だけが荒れ狂う嵐の最中に捩込まれたかのように暴れ、白波を立たせて見たことの無いものが出現した。
筋肉の繊維が絡み付いた太い前脚。それから生える鋭利な黒爪は3本。いずれも木の幹くらい真っ二つに折れそうな程長い。岩盤のような強靭な青い鱗を持った身体は上半身しか湖面から出ていないにも関わらず既に木を見下ろすような高さだ。
圧倒される僕がそれを竜の一種だと認識するまでに、コールドは鮮やかに周囲の空気中の水分子を収束させ低温化。白光りする鋭い氷の粒を竜へと放つ。
鱗が若干ではあるが薄い喉の部位へ減り込み、肉をえぐった。
だが、それでも竜は微動だにせずにコールドを見下ろした。

「…………」

何か喋るが、僕らの耳には竜が唸る音にしか聞こえない。コールドも見上げたまま同様な声を発する。ラプラス特有の美しい鳴き声ではなく、コントラバスの不協和音が重なったような、竜のそれ。
恐る恐る木の幹から彼らへと向かうと、コールドがこちらに気付いたようだ。
竜へもう一度唸ると湖の淵まで泳いでやって来た。

「今日は……お久しぶりです」
「梓。そして零央か……まさかこんなところで出会うとは思わなかったな」

ふふ、と笑みを浮かべるコールドを見てホッとした。僕に気付いていない彼の表情は島で見る彼の表情とは全く異なるものだったから。思わず声を掛けるのも躊躇う程に恐ろしい形相だった。
そんな表情を見たはずの零央だが、自然と彼の姿を見ると湖へと入る彼の喉元へ頬を擦り寄せた。
コールドもまた、彼の頭へと頬を擦り寄せる。

「……」

その時、後ろで竜が唸った。それとほぼ同時に巨大な身体をくねらせ、水中へと水しぶきと共に姿を消した。
僕は呆然とその姿を見送る。

「あれは、水中に住む竜だ。他の小型の竜を補喰して生活している。幸いにも俺達は竜とは共存関係にあるが故に、襲われないけどね」
「はぁ……」

此処へ来てからというものの、驚きっぱなしな気がする。少しずつ自分の住んでいる世界が遠い存在に感じてしまう。



コールドと一緒に居たいという本人の希望から零央と別れ、再び建物へと戻ってきた。
戻って来ると、調度此処に居た人達が戻ってきていた。翼の生えた竜や、クロさんを思わせる巨大な狼の背に跨がった彼らは見ていてなんだか凄いと思った。
その中の一匹が、こちらへとやって来る。それでも逃げ出したりしないのは、その黒銀の毛並みを持つ狼は特別な存在で、昨日僕を運んできた張本人であることをすぐに見抜けたから。

「よう、梓。今戻った」
「お帰りなさい、クロさん……」

ふふっ、と笑った狼は僕の顔を鼻で突いて来る。それに答えるように僕もその鼻の辺りを撫でた。


長い戦争が終わったと知り、その夜は外で派手にパーティーを行った。
僕と同じくらいの少年達は嬉しそうに笑みを浮かべていたのだった。

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SS.2月2日夜


スプリットは半日に及ぶ海賊の取り締まりを終えた。
現在彼は新人砲術士官候補生として、フリゲート艦<リレントレス>での勤務の最中だ。
<リレントレス>はごく最近までグラティサント要塞の攻略を支援する形で共和国軍の一員として働いていた。しかしその要塞に核が仕掛けられているとの情報が入ると真っ先に撤退するように指示が下されたのだ。というのも、この艦に乗っているのは新人の、将来的には共和国軍の士官として戦える逸材が多く乗っているからだった。
この司令部の判断にグリー艦長を始めとするクローンバンギラス達は渋々といった様子だったが、多くの士官候補生は……少なくともスプリットは、安堵の気持ちを覚えていた。
そんな任務が終わり、スプリットは共和国の中で政治の中心となっている惑星タイタリアの基地へと降り立ったのだ。

「よう、スプリット。お前また飛んだんだって?ホント羨ましい限りだ」
「え……ありがと」

ブリーティングルームに入るスプリットを待っていたかのように待ち構えていたのは、一匹のライチュウだった。
彼は差し出した手にグラスに入ったコーラを持っている。反対の手に持っているのはビールのようだった。
スプリットはそれを受け取ると、一気に飲み干した。
実のところ、声を出し過ぎて喉はカラカラだったのだ。

「俺達ももう少しでテストがあるだろう?それに合格すりゃ、正式な砲術士官だ。」
「ん……」
「何だスプリット、お前嬉しくないのか?」

そんなこと無いよ。嬉しいよ。彼はにこりと微笑んで見せた。
ライチュウはそんな彼の様子に納得したかのように頷き、ビールを煽った。
だが、違うのだ。スプリットは何かが違うと考えていた。始めの頃は勉強で得る知識も嬉しかったし、兄のレウスのようになりたいと強く願い、此処まで走ってきた。
しかし、<リレントレス>に配属が決まってからというもののその艦内での空気の重苦しさに押し潰されそうなのだ。
厳しい艦長のグリーの存在もあったが、これはまだ許せる範囲内だ。スプリットにとって最悪だったのが、死ぬことを美徳とするクローンバンギラス達だ。
お互いの思考が180度違う。そんな中で生活をするのが堪らなく不安で、恐ろしくて。
艦での少ない休憩はクローンバンギラスと出会うのを恐れ誰も来ない倉庫で過ごすという有様だ。

「スプリットは艦長を目指してるんだっけ?」
「うん」

泥沼のような思考に陥っていた。掛けられた言葉に反射的に答える。

「いいよなぁ、艦長狙えるなんてよ。しかも、時期がスゲェ良い時期だ」
「……どういうこと?」
「……お前、艦長目指すのにどっか抜けてるよなぁ……」

ニヤリと笑みを浮かべて話すライチュウはスプリットを見上げた。
近い時期に共和国は各地での戦闘の多さを配慮して、軍に宇宙戦艦の増強をさせるらしい。それに合わせるかのように当然艦長というポストの席が増える。そう彼は言った。

「……そんなもんなの?」
「でもそう考えとけって!急に任せられるかもしれないからな!」

僕なんてまだペーペーの、まだ補佐官という立場なのに。何故だろう。このライチュウは凄く前向きに事を捕らえようとしていた。それが自分の悩みを拭ってくれる。

「……てか、お前また少し痩せたんじゃないか? おっと、俺はそろそろ行かなきゃ!じゃぁな!」
「うん……? あぁ、またね!」

本当はもっと話していたかったのだけど、大急ぎで駆けていく彼の後ろ姿を止める事はできなかった。
ふと気付けば、彼の飲み干したビールのジョッキが机の上に鎮座している。
それを片そうと立ち上がった所で、通信端末が鳴った。
相手はグリー艦長だった。
一瞬不安な気持ちに襲われた。

「……スプリット砲術士官候補生です」
「グリーだ。……少し話がある。……お前はガラントス将軍を知っているな?」

自分の事ではない。ガラントスという名前に驚きの表情を浮かべた。

「ポ……ガラントス将軍に、何か」
「<リレントレス>艦長室で待っている。……以上、グリー通信終わり」

途切れた通信に不安を感じつつも、スプリットはグラスを片さずに駆け出した。

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SS.竜の話

真夜中にポケナビが鳴った。シロは夢から引き裂かれたような気持ちだったが、それを悔やむ隙もなくそのポケナビに応答すべく手を伸ばした。
「はい、No13医務室です」
「No17の竜騎士や。青葉2704で敵の偵察機を発見。これを撃ち落とそうとしたんだが、一匹と一人やられたんや。収容してもらってえぇか?」
「了解しました。こちらへは何分頃?」
「ヴィジールでこの位置と速度やから……15分ってとこやな」
「わかりました、待機してるんで安全確保を頼みます。こちらも警戒して待ってるんで」
「ありがとさん、通信終いや」

基地は蜂の巣を突いた騒ぎとなった。
狙撃兵は見張りとして壁の上を陣取り、相方のポケモンと共に西の空を睨んだ。
シロ率いる軍医達は白衣に身を包み、外に出た。
「戦闘機が相手だからな。恐らく7ミリ弾だろう……」
「摘出は何例こなしてる?」
「87例……ですが、機銃弾は初めてです」
シロは傍らの少年へ笑って見せた。
「誰でも初めてはよくある事。だけど、この患者を落とすわけにはいかないね」
途端に少年の顔が強張る。初めての経験を前に、冷静でいられるハズがないのだ。
しかし、それよりも辛く、激しい葛藤を引き起こすのが医療の現場だ。
この少年も既に100例近い手術を行ってきた。だが、後方の落ち着いた敵の攻撃の心配がない安全な場所でのそれと、前線で行うそれとでは全く違う。
いざ前線に彼が出た時に、死なないように指導してやるのも先輩の勤めなのだ。
「僕はヴィジールを診る。難易度はどっちが高いかは言わなくてもわかるよね?それじゃぁ、頑張ろう」
西の空に一匹の巨大な竜を護るように、何匹もの小さな竜がその周囲を飛んでいるのが見えた。
迎撃に飛び立ったNo17基地に所属する竜騎士の小隊だ。
ふらふらと飛ぶ大きな竜がヴィジールという種族の竜だ。大きさは大体頭から尻尾まで20メートルといったところだろうか。竜騎士曰く、速さと力強さを兼ね備えた理想の竜なのだとか。
そんなヴィジールがふらふらと飛ぶということは、それなりの痛手を負っている筈だ。
「担架準備。……それから、単位5から10に増やしておいて。」
細かな指示を出す少年。集中は切れていないようだった。
そして、低速で飛んできた彼は基地の前の広場に倒れこむ。その背中に乗っていたであろう兵士は、派手な赤色に染まって味方の肩を借りてようやくたどり着いた。
「止血優先!麻酔掛けて!……こりゃ、酷いな……」
シロもテキパキと指示を下した。
ヴィジールの状態は悪くない。機銃を5発程右から撃たれたらしく、弾痕が残っている。貫けてはいなく、機銃の弾丸ですら皮膚の浅い部分で食い込むように止まっていた。
こういう状態の時は、意外かもしれないが弾丸は抜かなくても良い。無理矢理抜かなくても、強靭な筋肉で異物を外に押し出してしまうからだ。
だが、1発の弾丸が厄介な位置に食い込んでいた。
「……1発背中に食い込んでいる。脊髄の近くだな……」
首に近い背中にそれはあった。
紺色の皮膚からどす黒い血を流して、30センチ程弾丸が埋まっているのが確認できた。
同時に麻酔を撃ち込んだのか、ヴィジールは大人しくなった。呼吸の音だけが聞こえて来る。
「麻酔を確認した。……背中の弾丸を摘出しよう」











「アーチャーからのレスが届いた」
パシン、と軽く電子パッドを叩いてからそれをレシフィールへと差し出した。
画面に映し出されているのは、戦艦強襲のために選ばれた先鋭の名前と代表者アーチャーからのメッセージ。
それを軽く眺めたレシフィールはクスクスと笑みを浮かべた。
「お酒は開けてもどうなるかしらね?私達はまだ20歳になってない者が多いのに。」
「全くだ。 ……しかし、大人は何か嬉しいことがあれば酒を飲みたくなるもんらしいぜ?」
馬鹿みたい……レシフィールが呟いた。
俺はその様子を見遣った後、置かれた電子パッドを手に取った。
「意味なんて、無いのにね」
部屋の外に声が漏れないような小声で。
しかし、それは誰しもが感じていること。
「指揮官としては……あまり宜しくない発言だな?」
気持ちは、個人としては痛いほどに理解できる。
だが置かれた立場は指揮官という責任のあるものだ。
自分の指示1つで何万という兵士を殺したり、殺されたりする立場。
「解ってる……アンタの前だから言ってるの。それだけ。」
ならいい。軽く促して、俺はレシフィールを見遣る。
「……姉さん、作戦は30日に決行だ。それまではなるべく島に行かないとな?」
姉さんの視線が俺にその言葉の真意を求めるようなそれになる。
しかし、答える前に部屋の扉がノックされた。
「失礼します……治療が終わったので、報告に」
扉が開き、見慣れた白髪の少年が姿を現した。
普段島で見る彼と唯一違う点は、真っ白な白衣や頭髪まで血で赤く染まってた事だろうか。
「どうだった?」
「ヴィジールは麻酔で眠っています。目が覚めたら、飛行訓練を軽く行って経過を見るつもりです。特に脊髄近い場所に弾丸が食い込んでたので、運動機能の確認は絶対に必要になると思います」
その報告に、レシフィールの表情が何処か和らいだのは言うまでもない。
「わかった。 では、竜騎士の方は?」
「0322に死亡を確認。原因は大血管の損傷による出血多量でのショック死。」
シロは持っていた紙を差し出した。
クロが受けとって、それを眺める。
「……そうか。ご苦労さん。」
17歳、あまりにも若すぎる最期だ。
「ヴィジールですが……彼の遺書にはこう書かれていました。『彼をありのままの姿で生きさせてほしい』と。」
共に戦うパートナーのために遺書を残す者も多い。
戦争という事実から生れつき逃れられない以上、その最期の言葉を込めた願いはなるべく叶えるのだ。
それ程迄に、命は重い。
「明日、ヴィジールには私から説明するわ」
「それがいい。……俺は、もう明日のために少し眠る」
「僕も当直が終わったから、寝ることにするね。 ……おやすみ」
重苦しい雰囲気と共に、切れる会話。
そして3人はそれぞれ別れて行った。













竜にも気持ちがある。
彼との間に結ばれたものは多い。
『また此処に居たの?』
人の声ではないその言葉で、レシフィールはヴィジールへと問い掛けた。
ヴィジールは月を背中に振り返る。紺色の巨体とそれに似合った翼が美しく動いた。
『我は機械ではない。』
『勿論理解してるわよ。ただ、私は一人の竜騎士として放っておけないだけ。』
自らが動き、彼の長い喉元にそっと触れた。
それを拒む事なく、しかしその気持ちを見透かされたような発言に酷く恥ずかしそうに視線を月に向けた。
『……人間は、我と違う』
身体の作りも、考え方も。
それが統一されていればともかく、個々が違う思想を持っている。人間は多く存在し、多くの者を見てきたが、同じ種族なのかも怪しいと思える思想を持っていると感じる事があった。
その彼の言葉を黙って私は聞いていた。
『竜は自らの種の繁栄のために動くということはない。他の種族、そして自然……それら全てを考慮に入れ、生きる。すると必ず全ての個体は種単位での統一された考え方が完成される。そうなれば、種の間で無駄な争いは起こらん。争いは喰う喰われるの関係と、雌を巡っての争いだけで十分だ』
竜には竜なりの生き方。人間には人間なりの生き方がある。
しかし、互いが寄り添う生き方が出来ること。それは彼女自身が証明していた。
『……人間は、どうして争いを止める事が出来ないのかしら』
『弱いからな。弱い種族程自分の身を守るためにせかせかと動き回る。知恵をつける。そして、喰われる事を回避する。……人間は、自らの命を守るために人間を殺す事を習得した。その力は今や食物連鎖の頂点に居る我等をも震わせる存在となった。……だが、それだけだ』

人間は弱い。だから相手を知ろうとせず、自分勝手に人間を殺せるのだ。
それが、人間の生きる術なのだ。

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SS、国境を越えて

国境は空から見えるのか?と彼に問われた。
空から見た俺達の世界は、暗闇の世界だ。粉雪が舞い、肌が裂けそうなくらい寒い風の中を飛ぶ。
人工的な光は無く、遠くに見えるデンリュウの尾の光だけが俺達の行く道を照らし出している。
「彼は、この暗闇を見たことがあるのだろうか」
「……本人に確認をすれば良いじゃない」
背中の彼女が呟いた。その声に抑揚はない。
あのような言葉を残し立ち去った彼を見て気に病まないわけがないのだ。
「彼は、レシフィールより年上だろう」
「えぇ、そうね……もしも彼が私達の仲間なら、優秀な士官になれるわ」
「そして、この時期までに命との向き合い方を固めてしまうのだろうな」
レシフィールの手が、そっと俺の首筋を撫でた。
掌の感覚が、彼女が今生きている事を俺に感じさせてくれる。
「命を受け止めるか、それから目を逸らすか……ね?」
あぁ。俺は肯定してみせた。
俺達は誰かを殺し、誰かを助けられない葛藤と向き合って生きる戦士なのだ。
命の値は重すぎる。それが味方であれ、敵であれ、奪うのは容易な事ではないのだ。
だから俺達は割り切るのだ。命は軽く、失われるべき物なのだと。それは、いつか来るべき寿命だったのだと。生き物はいつか死ぬのだと。そう思い続け、自分の気持ちを殺し続ける。それがやがて、俺達の強さになっていく。
「そのような教育を受けてきたのは、お前達だけだ」
彼は、違う。
その世界では、満足過ぎる程に腹を満たし、夜の闇を切り裂いて光を生み出しては自分の要求を満たすために使われる。自己を表現する事は容易であり、自由であることを選択出来た。
『人は人らしく、ポケモンはポケモンらしい死に方』が棺に納められ、大地に還る事なのだ。
そもそも俺達とは違う世界での出来事。
そんな世界で、彼は兵士になった。
そして悩み続けている。
「私はね、彼らの世界の兵士は弱いと思うの」
レシフィールが言う。
「人間として、ポケモンとして、彼等は十分に魅力的な存在だもの。……兵士としてじゃなく、人間として生きるべきなのよ。彼は兵士としては弱いけど、人間としてならとても強い人だから」
彼女なりの考えなのだろう。
「じゃぁ、俺達のような強い兵士はどうすればいい?」
くくっ、と牙を見せて笑った。

「そもそもロクな人間やポケモンじゃないわよ。彼等にとって、私達は……ね」

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SS.その日の夜


彼らが嫌っているのは人間の全てだ。

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つづきはこちら

SS.繋がりの話

太陽が昇りはじめた地平線まで遥かに広がる大地を見下ろして、その少女は空を駆ける。

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続きはこちらから

SS.守るべきもの

その連絡が入ったのはあまりにも突然の出来事だった。

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つづきはこちら

オーケストラメンバーファイア村合宿 Part.2 番外編

結局ガルクに部屋を奪われ、仕方が無いので海で一晩を過ごした。

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つづきはこちら

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[05/09 江梨子]
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[05/08 美香]
[05/08 亜弥]
プロフィール
HN:
年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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