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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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休息を経て

その事故からはもう1週間以上経とうとしている。
事故の当事者であるケルドは眠り続けていた。
彼の部屋は驚くほど静かで、音を立てるのは心拍を計るモニターと呼吸機だけだ。
何れにせよ容態は安定している。
「…オペは成功だ。彼はいずれ目を覚ますだろう」
「ご苦労様、ルバート。留学から戻ってきて、益々メス裁きが良くなったように見えたよ」
「そんなことはない。シロの処置も相変わらず見事だった」
呼吸のためにマスクを当てられたケルドのベッドサイドでルバートとシロが一つ安堵の息を零す。
その会話に見事に入れないのが、フィノである。
彼は最も軍医としての期間が短く、実力がこの3人の中で最も劣る。とはいえ、医者としてのレベルが低いわけではない。シロとルバートがあまりにも医者としてのレベルが高いのだ。
「Ross手術…か。ルバートもホント、驚かせてくれるよね」
「事前にケルドのデータは入手できたからな。いつか、こういう時にオペが出来るようにならなければならない」
Ross手術とは、今までの医療を覆す画期的なものだ。
フィノは手に持っている資料をめくった。
先ずクランケのデータを入手する。これは血液や身体の細胞等どこでもいい。ただ、唾液は遺伝子データ量が少なく好ましくないと言われている。
次にそのデータを元にクランケのデータとピタリ一致する器官及び部位を生成する。
これは過去からあったクローン生成術を応用したもので、完全なクローンの腕や脚を作るのだ。
拒絶反応が起きないのはもちろん、身体の大きさを変えることも可能なのでクランケに移植したときの違和感は全くない。
ここまでは過去にも多くの症例があり、多くの兵士がこれによって車椅子から脚による歩行を取り戻せるようになり、戦場に再び戻る事ができる。
今回違うのは、クランケが脳死判定をされたことにある。
脳死とは、一言で言えば肉体が死に脳だけが生きているということだ。呼吸機を付け、体内に栄養を点滴で取り込む事で呼吸だけはし続ける事となる。
それを死んでいるのか生きているのかの判定をするのは非常に困難を極めた。
生命倫理が衝突し、法が制定されるまで何十年も掛かったらしい。
現在の自分達の国では脳死は死亡判定になる。
つまり、その判定をされた瞬間死亡通知書に医者としてサインをすることとなる。
この患者は死亡した、と。
話をRoss手術に戻そう。
Ross手術は脳死の患者から精神だけを取り出し、クローンとして作られた別の肉体にその精神を宿すことである。
非常に困難な手術だが、過去に1例の成功例があり新たな法整備が必要とされるだろう。
現在の法律ではこのクローンを認めることはない。
法律上ではケルドは死んでいるのだ。
「つまり、Ross手術の最大の相手は法律だったわけだ」
「幸いなことに、ケルドなら此処に戻れなくても新しく生きる場所がある」
「トライデント…ですか」
ルバートがフィノの言葉にこくりと頷いた。
「あそこでなら、ケルドも受け入れてくれるだろう」
「新しい身体も、ケルドは気に入るだろうしね」
シロが小さく微笑んだ。

それから程なくしてケルドは再び目を覚ました。
一度死亡判定が書かれてから生き返った例は、これで2例目である。
ケルドはあの大怪我がリセットされたかのようにベッドを下りて立ち上がれたのを見た時は流石に驚いた。
実際、身体を入れ替えたのでリセットと言えばリセットなのかもしれない。
「…なんか、自分の身体じゃないみたいだな」
とは本人の言である。
新しい身体は一回り体格が良くなった。
ケルドは有能な戦士だったが、やはり体格に恵まれないのはとても残念なことだった。
素早さを維持したまま更に力強さを。導かれたように作られた身体に彼も満足していたようだった。
そして、あっという間に数日が経った。
誰の目にも触れず、調整程度のリハビリとデータを取るためだけに病院の地下で様々な訓練を行った彼はとうとうこの世界を離れるのだ。
「ありがとう、世話になった」
「新しい身体だ。存分に虐めてやれ。そのうち機会があったらトライデントにまた遊びに行くよ」
握手を交わすルバートとケルドを見遣った。
なんだか別世界の出来事のような気がしてしまう。
ボーッとしていると、ケルドが手を差し出してきた。
「フィノ、世話になったな」
「俺、全然手術に関わってないよ」
ケルドは首を横に振った。
「そんな事はない…俺はお前達に命を救われたと思ってる。お前は立派なドクターだ」
「ケルド…」
握手を改めて交わした。
「達者でな。その…凄い戦士になれることを祈ってる」
「お前も凄いドクターになれるように頑張れよ」
手を離し、大きく頷いた。
そしてケルドは人目に触れぬように機敏な動きでこの世界を後にしたのだった。

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年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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