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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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月の光と逆鱗と

 
 風のような疾さで飛ぶ。
 ”あの世界”と”この世界”を繋ぐ入道雲を抜けてから一気に気温が下がったのを肌身に感じたが、それは別の暖かさによってしっかりと護られていた。
 オレンジ色の表皮に護られたヴィクトールの身体はドラゴンとは思えないほど暖かく、そして、生命力に溢れていた。
 飛んでいる間は会話することも出来ない。あまりの暖かさについ微睡んでしまいそうになっていたが、眠ってしまっては一生懸命飛んでいる彼に失礼だ。
 ちら、と上方を見上げて彼の表情を見た時に、彼も私の顔をちらりと見た。
 体内の血液が一気に沸騰したかのように熱くなり、体温がまたみるみる上がっていくことが自分自身でもわかった。今頃頬は真っ赤に火照っていることだろう。
 何故だろう。今確かに彼は私の心を見透かしたかのように此方を見たような気がした。
 そうではない。それはきっと間違いだ。一方的に分かるなんてことはないだろう。
 ……分かるのだ。薄々、彼の考えていることが”私”にも。
「眠たかったら、眠ってもいいんだよ?」
 速度を落としてまで発された、飛行を始めてから初めての問い。
「……いえ、トールさんが頑張ってるのに眠るわけには行きません」
 本当はもう夜中で普段なら眠っている時間だ。それに、今日も”技”の感覚を取り戻そうと必死に訓練した。何時間も何時間も私は木や岩に向かい”逆鱗”を繰り出す練習をした。その疲れが溜まっているのは否めない。しかし……
「わかった。それじゃ、少しおしゃべりしながら飛ぼうか」
 トールは私の意見をすぐさま尊重してくれる。困っている相手には躊躇うことなく手を差し伸べて、助けてくれる。どこまでこの竜は器が広いのだろうか。
 私はこくりとうなずくと、その直後に全くいきなりヴィクトールの巨体が天地さかさまになったのだからたまらない。思わず悲鳴に似た叫び声を上げてしまう。その声にオレンジの竜が背面飛行というアクロバティックな飛行中にもかかわらず声を上げて笑う。
「アハハハハ、ごめんね。驚かせたかな。 見てごらん、月がとっても綺麗だよ」
 直後は胸が高鳴り、心臓が破けそうなほどに驚いていた私だがそれも数秒の出来事。
 正面には、巨大な巨大な月が浮かんでいた。手を伸ばせば掴めてしまうのではないかと錯覚してしまうほどにその月は大きく、近い距離を浮かんでいるように感じた。
 そして、不意に別の高鳴りを感じる。
 あまりに美しい月の光は、それを受けるだけで特別なエネルギーを体内に生み出してくれているような気がした。
 今まで私の世界で月を見上げたことはあったが、そんな事は全く感じなかった。どんなに深い森の中で生活していても人間の存在が遠くに感じられ、すぐそこまで人間が踏み入る事は幾多もあった。
 だが、今は違う。どんなに集中して見渡す限りの空間を見通しても、人間が存在するような気配はなかった。地平線の端から地平線の端まで人間が存在していないのだ。
「此処はポケモンと獣の王国。全ての生命の源が育まれる場所。言わば陸の海と言ったところかな」
 大きく宙返りをする竜が呟いた。速度はかなり落ちていて、もう私が変な声を上げることは全く無い。
 そうしてくれれば、森や山々が遠くまであることにようやく気付く。銀色の月の光はここまでも美しく、優しく、私達二匹や木々を照らしていく。
「此処に人間は居ないんだ。神話で語られる多くの神がこの地で生まれ、育まれ、世界を見守っている。だから、人間はこの土地を崇めて不用意に立ち居ることは深く禁じられている」
「神々が生まれ、育った場所……」
 私は馬鹿のように言葉を反芻することしか出来なかった。でも、その言葉の重さは初めて訪れた自分でもなんとなく理解できる。
 月の光を浴びた時感じた”何か”がその答えなのだとしたら。私は育まれている。生命の神がどのような姿形をしているのかは訊かねばわからないが、その神に祝福を受けているという事はもう感じている。
 この場所でなら、きっとやれる。私は確信めいたものを既に感じ取っていた。
 そして、気づけばもう眠ってしまっていたようだった。
 
 島でクーリアに出会った時、悲しそうな表情をしていた。本当はもっと早く駆けつけたかったんだけどお仕事をして霧に向かって飛ぶことも出来なかった。勿論お仕事が終わったと同時に強い南風に翼を乗せて空へと舞い上がったのだけれども。
 静かに彼女は話をしてくれた。どうやら何かの事件に巻き込まれ、一時的に”技”が使えなくなってしまったらしい。
 でも、大丈夫。僕なら彼女の覚えられる技は大抵覚えているし、その技を教えることだって出来る。
 彼女の悲しみを拭ってみせる。
 洞窟にたどり着いたヴィクトールは、自分自身も軽く入れるようなそこに入り込み身を横たえた。が、同時に微かに感じる何かの気配。洞窟の奥の奥、最奥から感じる気配があった。
 此処は暫く来ていなかったとはいえ、僕の縄張りだ。
 眠る気は一瞬で失せた。まだ何も気付いていないクーリアを残したまま、洞窟の奥へと向かう。
 縄張りの巡回を怠ってはいけないな、と心の奥で反省しながら奥へと向かっていく。当たり前だが縄張りの洞窟であるので幾つかの分岐点も完全に把握している。相手にする存在が何処に居るのかもわかった。気配を頼りに奥へ、奥へ。洞窟で眠る小さなポケモン達は突然主が帰宅したことに驚き、目が覚めて岩の陰に飛び込んだ。
 それは、例外なくコラッタの家族もそうであった。
 眠り込んでいたところに響く足音。地鳴りのような巨大なそれに飛び起き、妻を先に逃したお父さんはまだ半分寝ぼけている息子の首を咥え上げ岩の陰に身を隠す。
 足音がついに自分たちの真横まで迫り、眠っていた場所にドン!と巨大な脚が踏み込まれる。同時に感じるのはビリビリとしたトール様の殺意。
 危なかった。もう少しで自分たちはぺしゃんこになるところだった。
「なぁ、あれ不味くないか……?;」
「トール様怒ってるよ、避難した方が良いんじゃない?」
「いや、だが……まずは状況の確認が先だ。トール様は最近来たドルヴァ様と一騎打ちするつもりであろう」
 ドルヴァ様。洞窟に住む小さなポケモン達はその名前を聞くだけで震え上がる。誰がいつしか呼び始めたのかはわからない。だが、お父さんはその巨大な姿を一度目前で見たことがある。
 爪だけでお父さんの3倍、脚だけで10倍、お父さんが50匹は入るような大きな口と牙、毒々しい茶色と紫の模様。岩のような鱗。四足の脚はすらりとして長かったが、その破壊力は紛れも無く強大だ。大きな岩もモモンを潰すかのように壊してしまう。その姿を見た時、私は小さなポケモンで本当に良かったと心の底から思ったものだ。
 そして、お父さんはその種が人間の間でヴォルヴェイク種と呼ばれる大きく凶暴な竜である事は知る由もなかった。
「えっ、トール様がドルヴァ様と……トール様がドルヴァ様をやっつけてくれれば、もう僕らは前のように岩の陰でびくびくと震えながら生活する必要は無いんだね!」
 息子のコラッタは明るくそう言う。しかし、お父さんは前足で髭を撫でながら思う。
「うん、僕もそうなってほしい……しかし、トール様はドルヴァ様を知らないし、幾らトール様が大きなカイリューとはいえドルヴァ様はそれよりも大きいと思う。それに……」
「もう、お父さんは心配症なんだから!トール様が負ける筈がない!今までだって大きくて乱暴なポケモンや竜から僕らを護ってくれた!そうでしょう!?お父さんはトール様が勝てないとかそう思ってるわけ!?」
 息子がぷりぷりと怒り、近くの石をバシバシと叩く。妻が困ったように私に視線を寄越してくる。髭をなぞり、考える。
「……勿論、僕もトール様が勝つと思う。そう、10回トール様とドルヴァ様が勝負したとしよう。そしたら、7回はきっとトール様が勝つだろうね」
 お父さんはそう答えたが、それは方便だ。本当の予想は全く逆。10回勝負したら7回はドルヴァ様が勝つ、というものだ。どう頑張って見立ててもトール様が勝てる確率は五分五分だ。
 そんな言葉に息子はにこりと笑って走りだした。あろうことか、トール様の消えた洞窟の奥へ。
「10回ともトール様の勝ちだ!行こう、父さん。トール様の勇姿を応援しに行くんだ」
「待て、行っては駄目だ!おい!!」
 思わず4,5歩飛び出して、妻の存在を思い出し振り返った。
「必ず連れて戻る!君は外に避難してくれ!”大岩の柱”の根元で落ち合おう!」
「はい……!」
 声を荒げるお父さんの声にお母さんはたじろぎ、一瞬躊躇った後お父さんとは逆方向に走りだしていた。
 暫くは真っ暗な洞窟を走り続けていた。奥のように住んでいるズバットの群れが、強靭な体を持つイシツブテやゴローン達ですら出口へと向かって一直線に避難していく。対向する流れに逆らって進むのは難しいが、此処で息子を諦めるわけにはいかない。
「ちょろちょろするな!」
「うおぉっ!?」
 前ばかり見ていたせいで危うくサイドンに踏み潰されるところだった。前だけじゃなく、上方にも気を遣い、慎重に前へと進んでいく。
 そのうち、対向する波がぷっつりと途切れた。彼らが一瞬で通り過ぎ、暗闇に消えていった。
 その後は闇と沈黙に支配された世界であった。
 物音1つ、気配の1つも無い。そのまま息子の名を呼びながら先へと進んでいく。
 そして、息子は大広間の入り口で呆然と立ちすくんでいた。
「居た!こんなところに居ないで逃げ――」
 息子の手を掴んで引っ張ろうとした時、暗闇の洞窟が眩しい程に輝いた。目を覆い、その光の先を見る。
「あ、あ……」
 もうお父さんも動けない。脚と地面を縫い付けられたかのように、ただその場で呆然としていた。
 トール様ですら小さく見えるほどの身体を持つドルヴァ様の口が大きく開かれたかと思うと、紅蓮の焔がその口から吐き出されてトール様を覆い尽くしたのだ。
 昔、大きなリザードンが本気で勝負しているのを岩陰から見ていたことがある。リザードンの焔が素晴らしく強いもので皆から賞賛されていたのだが、それもドルヴァ様の焔の前では霞んで見えた。
 あまりに強すぎる。この焔が消えた時、トール様は地面に倒れているだろう――そんな悪いイメージばかり考えていた。
 だから、その次の光景が信じられなかったのだ。
「……少しはやるみたいだね。でも、所詮その程度だ」
 火炎放射を受けたはずだった。しかし、トール様の表皮にその痕跡を残すものは何も無い。余裕の笑みすら浮かべて、そしてその直後の事だ。
 地面が唸りだした。
 地震かとお父さんは思った。あまりに強い揺れで立っていられず、近くの壁にぴったりと張り付き半目で様子を見る。
「……馬鹿な」
「どうやら、この洞窟の皆を虐めてくれたみたいだね。本当に、本当に、許せない」
 底冷えするような声だった。
 トール様が怒っている。凄まじい殺気がびりびりと伝わり、洞窟全体を揺らしているのだと気づくまでにどれほどの時間を要したかわからない。ともかく、このあとの光景は悲惨であった。
 地面が揺れに耐え切れず裂けた。巨躯を切り刻む爪は留まることを知らず、幾度もドルヴァ様に襲いかかる。その度にドルヴァ様は吹き飛ばされ、とうとう反対の壁際に追い詰められ、尚も止まない攻撃に身を切り裂かれる。背中から壁に体当たりするように飛ばされると、ドルヴァ様の柔らかな腹がむき出しとなり、其処をトール様が的確に爪で切り刻む。
 ドルヴァ様の背中が岩の壁に食い込み、岩を削って大広間を更に拡張していく。とうとう奥の壁が崩れ落ち、ぽっかりと向こう側に銀色の――月の光の注ぐ荒野が見えた。
「失せろ」
 普段なら絶対に発しないような暴言と共にドルヴァ様を太い尾で殴りつけた。ドルヴァ様は荒野へと吹っ飛ばされ、血の跡を滴らせながら大慌てで荒野を逃げていった。
 その後ろ姿を見送ったトール様は、全ての力を失ったかのように地面に倒れ込んだ。 
「トール様!」
 お父さんは反射的に飛び出した息子の名を叫ぶ。しかし、次の瞬間――あろうことか、トール様が倒れた衝撃で上方の大きな岩が崩れ落ち、息子に降り注ぐ。
 もうダメだ、と思った。目を閉じて、手で瞼の上からその光景を覆い隠す。ところが、数秒経っても
大きな岩が落ちる音。息子がぺしゃんこになる音は聞こえなかった。
 うっすらと瞳を開けて、指の間から光景を見る。
 月の光で影になっていたが、そのシルエットは確かにガブリアスであった。ガブリアスが息子に降り注ぐ岩を砕いてくれた。
 息子はガブリアスの足元で気絶していた。
 息子が助かったことに大きな息を吐いて安堵すると、歌声のように細く高い澄んだ声が聞こえてきた。
トール様ではない。だとしたら――と、ガブリアスを見た。彼女の唇が微かに揺れていた。
 
「……これが”逆鱗”なのですね。トールさん……」
 
 
 

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年齢:
28
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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