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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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牢獄 (20101028)

深夜、一匹の獣が収容所に到着した。
松明が燃え、周囲を固める巨大な狼と竜が唸る。
だが、クロはそれを意にもせずに門を潜った。
昔使って以来、あまり整備されていなかった収容所だ。古い建て付けでありどうやら狼の姿のままで入ることは不可能なようだった。
姿を人のものへと戻した。
入口の兵達に敬礼を反し、中へと進んでいく。
薄暗い石造りの建物は地下に2階、地上に2階という構造だ。地下2階が食料庫である以外、全ての階が牢獄となっている。
クロは地下へと向かった。
地上の階よりも牢獄1つ1つが広いこの階に収容されている者に話を聞こうと思ったからだ。
人間の兵とポケモンの兵がそれぞれ1つの牢獄を見守る。
敬礼を返しつつ進めば、目的の牢獄を守るサイドンが自分を見下ろして敬礼してきた。
「…ご苦労様です」
「あぁ。…休んでいいぞ。ところで、お前のトレーナーはどうした?」
「少し早いですが、交代しました。今頃下でぐっすり眠っているでしょう」
「なるほど」
クロはサンドンから視線を逸らし、巨大な岩の扉に近付き、それに備えられた木製の小窓から中を見遣る。
しかし、残念な事に枷で繋がれた相手の下半身しか見えない。
「…緊張しているようだな」
「えぇ、そりゃもう。何と言ったって、昨日まで戦ってた敵の大将側近です。実力は並大抵じゃない」
「自分より大きな相手は威圧感もある。なるほど、戦意を喪失させるだけの存在感もあるな。…開けてくれ」
「だからって負けを覚悟なんてしてませんよ。…気をつけて」
人間が数人掛かりで開けるであろう分厚い石扉を、サイドンが軽々と押し開ける。
その作業を待って中へと入った。
「失礼する」
「……」
じゃらり、と枷が鳴った。
首、尻尾、両方の手脚に縛り付けられた金属製の太い枷も彼が相手では弱々しく思えた。
兵のサイドンも同じ部屋に入れば緊張の表情を隠せない。
彼の2倍はあろう巨大なサイドン。それが、敵の大将だった。
「なるほど、近くで見ればやはり威圧感が違う。流石一国の軍を率いるだけの存在だな」
クロが床に座り込む彼へと視線を送りながら言った。
「オーガ…7、14メートル」
「クルオラ国軍に所属。最終階級は大将だ」
彼が口を開くと、クロは黙った。
「…まさか国力にこれだけの差があるお前達に負けるとは思っていなかったよ。拳を交えるお前達は強かったのだな」
「驚いたか?」
「…正直、驚いている。であるからこそ、だ」
再びオーガは自身を縛る枷をじゃらりと邪魔そうに鳴らして呟いた。
「殺してほしい」
「馬鹿なことを…却下だ」
「だろうと思った。…お前達はよっぽどの物好きなのだな」
ふん、とクロは鼻で笑い飛ばす。
近くのテーブルに無造作に腰掛けて脚を組んだ。
「クロだ。シティを統括している…おっと、変な気は起こすなよ。その汚い言葉遣いをどうにかしたらどうだ」
「下手な言葉遣いで悪かったな、クロさんよ」
オーガは楽しくなさそうに息を吐いた。
「…で、今の気分はどうだ?生まれ故郷は消え、共に育ってきたトレーナーは殺された。挙げ句捕虜として牢獄にブチ込まれた気分は?」
「スカッとしてる。鎖で繋がれているが、もっと強力な鎖が壊されたんだからな」
ニンマリとクロに笑うオーガ。その笑みにクロも答えてやった。
「心配すんな。俺らはお前達を殺したりしやしない。ポケモンだからと言って、奴隷のように扱ったりもしない。好きなところで好きなように生きればいいさ」
「流石は噂に聞く若干二十歳の名将だ。考え方が既に違う」
「冗談は止せよ。名将など…そんな地位は要らん」
クロは苦笑しながらテーブルから舞い降りる。
そして、鎖が繋がれているとはいえオーガの拳が届く位置まで移動すると彼の腹を軽く叩く。
それを見ていたサイドンは思わず声を上げてしまいそうになるが、何とか堪えた。
「ふむ、扱かれてただけあるな。近くで見れば見るほど、良い身体をしてる。…手放すのが、惜しい」
オーガは撫でられても何も答えなかった。
「お前達の国はポケモンに対する差別が酷いと聞いたが。…それは本当か?」
オーガの首が微かに震えた。
「世界は、まだまだポケモンに優しくないのだろうな。そんな法律を何百年も前に人間が勝手に作ったのさ。国の中での行動…例えば、結婚や言論は制限される。徴兵もその1つだ。…俺は法律学を学んだわけではないが、ともかく住みにくい世界だ」
「…そんな国は多い。俺達もその国に反乱を起こした。成功して今はなんとか生きては居るが、周囲の国は常に目を光らせて俺達を監視していた」
「反乱を自分達の国でも起こさせないため…か?」
クロは小さく、しかししっかりと頷いて返答した。
「馬鹿な連中だ。自分達が甘い汁を吸って生きていられるのは、俺達のような犠牲が幾重にも重なって出来上がった上に座っているからだ」
「…全くの同意見だな」
オーガも肯定の言葉で頷いた。
「クロはこれからどうするんだ」
クロは軽く肩を竦めるような動作と共にオーガに背中を向けた。
翼がゆさり、と揺れる。
「今回の火種をキッカケに、お前達クルオラの同盟国が次々と戦争の挑戦状をたたき付けてきた。…恐らく、戦いたくもないポケモンが大勢居るのだろう。俺達はそいつらを助けるためにも、戦う」
「クロ、それは」
「無茶苦茶だということは百も承知だ。…だが、俺達は世界の秩序を乱してしまった。この流れはもう誰にも止められないだろう。…だとしたら、俺達は戦い続けるしかない」
オーガは閉口した。
クロは視線をサイドンへと飛ばした。
「命令だ。先のクルオラ戦争で捕らえた全ポケモンを釈放だ。仲間になりたいと言うヤツは迎え入れ、全て報告しろ」
「ハッ…人間はどうしますか?」
「殺せ」
「ハッ!」
サイドンが駆け足で消えていく。
クロはオーガへと振り返った。
「俺はすべきこと、成すことをするだけだ。後はお前に任せる。お前なら、仲間を連れて戦禍から逃れるくらいはできるだろう?」
壁に掛けてあった鍵を、オーガへと放る。
そしてクロが扉を抜けようとした瞬間、制止の声が響いた。
「この命果てるまで…クロ、お前の命を受けよう」
直後、オーガの手脚に巻き付いていた枷が彼の筋肉の圧に耐え切れずにバラバラと砕けていく。
首の枷だけは外れなかったが、鎖を引きちぎる。
「…そんなお前にピッタリだぜ」
「奴隷からの解放、か。悪くないフレーズだ」
二人は牢獄を抜け出した。

縛るものは、もう何もない。

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プロフィール
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年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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