Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。
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「……いいのか、それで」
「もちろん」
シロが穏やかに頷いたのはもう一週間も前の話だ。
肝臓の末期癌の患者に対し、行える治療法というものは大きく分けて2つある。
1つめは癌と戦うこと。抗癌剤を投与し、様々な副作用と引き換えに癌の進行を遅らせる事。
2つめは痛みを和らげること。癌を治らないものだと自覚し、腫れ物には触らないよう、ただただ痛みを取り除くだけの治療法だ。
前者と後者の違いは生きることを諦めるか、そうでないかという決定的な違いがある。残された余生をどう生きるかは患者が決めることだ。そこに医者は口を挟むことは許されない。しかし、私は医者を越えてシロの友人として言葉を挟んでしまった。
「ALT(作品中のオリジナルでの抗癌剤)を投与してほしいだなんて。あれは、認可が下りたのは一昨日で治験も行っていない抗癌剤だ」
「知ってるよ。とても強い薬だ……最悪、痛くて痛くて泣き叫ぶかもしれないね。でも」
シロが枕元のバックに手を伸ばした。そして、その中から書類を取り出した。
私は見ればすぐにわかる。カルテだ。それも、島でのポケモン達のものだ。
「わかるでしょ?僕の都合でホスピスを選択して、穏やかに死んでる場合じゃないんだ。僕が死んだら、このカルテに載っているポケモン達は医者を無くす事になる」
シロはカルテの紙面に瞳を落とす。完治したものも含めて、総勢200匹を越えるポケモンや人間のカルテがそこには刻まれていた。200もの命がシロの手に委ねられている。
「それに、僕も医者だからね。患者ではあるけど、だからと言って医者は止めない。医者は失った命を乗り越えてでも成長していかなければいけない」
「だからと言って、シロが治験を行わなくても…」
言ってから物凄い後悔した。治験は誰かが何らかの形で行うべきものだ。それが行われていることは事実で、しかし、私がその成果として薬を使っている事は間違いない。治験を否定するということは、薬を使う事を否定するということだ。
「……わかったね。これは君の試練でもある。僕はALTで癌の治療を行う。……わかったら、出て行ってくれないかな。僕はそろそろ眠りたい」
「わかった……」
有無を言わさぬ返答だった。シロはそっぽを向いて雪景色の窓の外へと視線を向けた。
私は外に出て覚悟を決めるしかなかった。
シロはあまりステーションコールを鳴らさなかった。それでも看護師が見回りに行けば必ず戻してしまっていた。抗癌剤は主に吐き気と意識が混濁するようだった。最も、末期癌の痛みは想像を絶するという。最後は理性すら飛んでしまうのだと。
私は外科と研究職が本業で内科的な……薬を与えて、様子を観察するというような事には慣れていなかった。私はメスを奮った患者もその後は内科の先生と相談し治療方法を決めると、今後を内科の先生に託している。そんな事をしていたと思う。だが、シロは内科の先生であるかのように忙しい時間の合間を縫っては患者の見舞いに行っていた。
だから、こうして目の前で戻し、呼吸が早く、痛みを感じては看護師にマッサージを施して貰っている姿を見て唖然としてしまっていたのだ。
「ごめん…ね…」
「何を言ってるんですか。痛い時に痛いと言えるのは患者の特権ですよ、先生。背中撫でますね。他にも痛いところはありませんか?」
看護師のタブンネがシロの背中を摩る。同時にシロが咳を吐く。私はALTでの治療結果を纏めなければならないのだが、それどころでは無かった。脳内で纏め、逃げるように病室から外に出る。
今までこんな患者は何千何万と診てきたはず。しかし、シロという存在が急変しただけでこうも心臓が切れそうな程動転してしまっている自分が居た。
「シロ……」
呟いたところでどうなるわけでもないのに、私は気付いたら呟いていた。
シロの病室から汚れたシーツを抱えて飛び出していくタブンネを呆然と見送った。そして、全く何もせずに新しいシーツを持ってシロの部屋に飛び込んで行くタブンネ。
彼女は強いな……私よりも、ずっと。
そして私はカルテに万年筆を走らせた。
「もちろん」
シロが穏やかに頷いたのはもう一週間も前の話だ。
肝臓の末期癌の患者に対し、行える治療法というものは大きく分けて2つある。
1つめは癌と戦うこと。抗癌剤を投与し、様々な副作用と引き換えに癌の進行を遅らせる事。
2つめは痛みを和らげること。癌を治らないものだと自覚し、腫れ物には触らないよう、ただただ痛みを取り除くだけの治療法だ。
前者と後者の違いは生きることを諦めるか、そうでないかという決定的な違いがある。残された余生をどう生きるかは患者が決めることだ。そこに医者は口を挟むことは許されない。しかし、私は医者を越えてシロの友人として言葉を挟んでしまった。
「ALT(作品中のオリジナルでの抗癌剤)を投与してほしいだなんて。あれは、認可が下りたのは一昨日で治験も行っていない抗癌剤だ」
「知ってるよ。とても強い薬だ……最悪、痛くて痛くて泣き叫ぶかもしれないね。でも」
シロが枕元のバックに手を伸ばした。そして、その中から書類を取り出した。
私は見ればすぐにわかる。カルテだ。それも、島でのポケモン達のものだ。
「わかるでしょ?僕の都合でホスピスを選択して、穏やかに死んでる場合じゃないんだ。僕が死んだら、このカルテに載っているポケモン達は医者を無くす事になる」
シロはカルテの紙面に瞳を落とす。完治したものも含めて、総勢200匹を越えるポケモンや人間のカルテがそこには刻まれていた。200もの命がシロの手に委ねられている。
「それに、僕も医者だからね。患者ではあるけど、だからと言って医者は止めない。医者は失った命を乗り越えてでも成長していかなければいけない」
「だからと言って、シロが治験を行わなくても…」
言ってから物凄い後悔した。治験は誰かが何らかの形で行うべきものだ。それが行われていることは事実で、しかし、私がその成果として薬を使っている事は間違いない。治験を否定するということは、薬を使う事を否定するということだ。
「……わかったね。これは君の試練でもある。僕はALTで癌の治療を行う。……わかったら、出て行ってくれないかな。僕はそろそろ眠りたい」
「わかった……」
有無を言わさぬ返答だった。シロはそっぽを向いて雪景色の窓の外へと視線を向けた。
私は外に出て覚悟を決めるしかなかった。
シロはあまりステーションコールを鳴らさなかった。それでも看護師が見回りに行けば必ず戻してしまっていた。抗癌剤は主に吐き気と意識が混濁するようだった。最も、末期癌の痛みは想像を絶するという。最後は理性すら飛んでしまうのだと。
私は外科と研究職が本業で内科的な……薬を与えて、様子を観察するというような事には慣れていなかった。私はメスを奮った患者もその後は内科の先生と相談し治療方法を決めると、今後を内科の先生に託している。そんな事をしていたと思う。だが、シロは内科の先生であるかのように忙しい時間の合間を縫っては患者の見舞いに行っていた。
だから、こうして目の前で戻し、呼吸が早く、痛みを感じては看護師にマッサージを施して貰っている姿を見て唖然としてしまっていたのだ。
「ごめん…ね…」
「何を言ってるんですか。痛い時に痛いと言えるのは患者の特権ですよ、先生。背中撫でますね。他にも痛いところはありませんか?」
看護師のタブンネがシロの背中を摩る。同時にシロが咳を吐く。私はALTでの治療結果を纏めなければならないのだが、それどころでは無かった。脳内で纏め、逃げるように病室から外に出る。
今までこんな患者は何千何万と診てきたはず。しかし、シロという存在が急変しただけでこうも心臓が切れそうな程動転してしまっている自分が居た。
「シロ……」
呟いたところでどうなるわけでもないのに、私は気付いたら呟いていた。
シロの病室から汚れたシーツを抱えて飛び出していくタブンネを呆然と見送った。そして、全く何もせずに新しいシーツを持ってシロの部屋に飛び込んで行くタブンネ。
彼女は強いな……私よりも、ずっと。
そして私はカルテに万年筆を走らせた。
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男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
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趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。
・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。
こんなやつです。仲良くしてやってください。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。
・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
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・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。
こんなやつです。仲良くしてやってください。
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