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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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幽霊探しの旅へ 20110318夜


ヴォルフシャンフェ――狼の巣、と形容される深い森と雪に囲まれた基地が存在する。そこはクロを初めとする極僅かな人数しか知らされていない場所にあり、記者ですら近付くことは不可能…。その忠告を聞かず、何とかスクープを納めようとする勇猛な記者が巣を護る狼に食い殺されたという噂だけが漂っている。最も、それはこの基地の存在を知るものにとっては事実であることは承知の事実だ。この基地を護る存在は巨大な狼なのだから。
クロは深夜二時半を回ったところでヴォルフシャンフェへと戻ってきた。うっすらと肩に掛かる雪を払い落とし、ここまで付き添った3匹の狼に警戒に戻るように指示をすると、統率の取れた動きで森へと消えて行った。エレベーターに乗り、地下の司令室へと向かう。
「おかえりなさい、クロ様」
「今戻った。コーリー、シロとハップスを呼べ」
コーリーと呼ばれた雌のルカリオは指示に思わずクロを見遣って小首を傾げていた。
「…どういうことでしょうか」
クロは厚手の革のコートを脱ぐと、壁の衣類掛けに無造作にそれを掛ける。「答える必要はないな」と呟きながら下着まで脱いでしまうと、コーリーに追加の命令を下した。
「シャツ、コートの新しいのを頼む。3着もあれば十分だろう」
「お出かけなさるのですか?」
コーリーのその声色は耳の良いクロでなくとも好ましく思っていないということが聞き取れるものだった。それでもコーリーはクロの下着を準備した。
「…数日留守にするだけだ」
細身ながら引き締まった身体からコーリーは微かに視線を逸らす。
「…お言葉ですが、クロ様。現在の状況を知らないわけではないでしょう…?」
「ルベフェクス進攻…その最終段階だ。敵は総力を挙げて、我々の部隊を攻撃してくるだろう。」
その通りです、そう言いたげにコーリーは小さく頷いてみせた。
「…現地に居る部隊は?」
クロがコーリーを鋭く見遣った。その眼光にコーリーは一瞬うろたえる。その瞳は、誰もが畏怖する狼のものだったからだ。
「20部隊を筆頭とする6師団…が」
「優秀な兵が揃っていると聞いている。…私が指揮を取らずとも、兵力に差がある。八千の敵兵に対し、三万の兵を送り込むのだ。…私がわざわざ赴く程ではない」
ですが、と頑なにコーリーはクロを引き留める。太いベルトがバックパックと連動して動き、金属音を響かせた。
「…くどい。俺が命じているのだが」
コーリーはその時この基地に住む本当の狼が誰なのかを改めて確認させられた。逆らえば殺される……恐怖と畏怖で縛り付けたその鎖を破れる強い力を持つものだけが、この場所に存在するのだ、と。この社会は、力で階級が決まっているのだ…と。

コーリーが慌てて逃げるように部屋を出ていくと、クロは部屋の壁に背中を預けた。左目に隠された深紅をそっと撫でる。右の人の瞳を閉じれば、そこはもう人が住むべき場所ではない。総ての空間が暗転し、モノクロに包まれる。我々の認知すべき世界を『表』と称するならば、この場所は『裏』の世界と言う。そこでは空間は疎か、存在、時間でさえ万物の法則を超えた動きをする。なぜならこの空間を作り出したのは創造の神ではなく、他でもないクロ自身なのだから。それを決定するのは、自らの力だ。
この世界の支配を任せる存在を呼び寄せる。MBではなく、浮かび上がる硝子の破片。ゆっくりとそれが横方向に回転し光は無くとも自らの姿を映し出す。その硝子の裏面を見遣り映ったのは、巨大な姿。灰色をベースとし、巨大な黒い翼が生える。6本の脚と毒々しい赤と黒の縞模様が特徴的な姿は神話の世界で語り継がれているギラティナと呼ばれる存在。
「グラティス」
名を、呼ぶ。硝子は粉々に砕け、硝子越しの会話から解き放たれた彼は久々に踏む地面の感触を確かめるように最前の脚の爪で撫でた。
「話は聞いていたか」
クロが問えば、深紅の瞳はゆっくりとクロを見据えた。
「私が干渉するまでもない」
無言のYES。そして簡潔な結論。
陸上でドラゴンを除いた最大の動物は象だと言われている。異国の研究者によれば体長およそ16メートル。重さは100トンには下らないという。
その象でさえこの巨大な姿の前では小さく霞んで見えるだろう。
「貴様が見ればすぐに判ることだ」
「…そんなに簡単なものなのか?」
重力は0に等しい。それでも脚を折って座りクロを見下ろすのは、自分に見下ろすだけの力があると見せたいからだ。
「物事の存在には必ず理由があり、幽霊騒動もその一つだ」
かつて神と崇められた存在が居た。
しかし神と崇められた存在は一人の青年の前に平伏したのだった。
「物事の全てには理由があり、それが私を神とやらに仕立て上げ、挙げ句貴様とこのような関係に陥ることになった。…幽霊という存在を人が信じないないのは、幽霊というものの存在を見出だせないからだ」
ほう、と息を漏らした。
「クロ…貴様にその理由とやらを見いだせるか?」
クツリ、と牙を見せて竜が笑った。

ハップスは狼の群れのリーダーだ。群れの中で歳を重ねているのも彼であり、クロと共に生きると決めた狼もまた彼である。かつて戦争の間で獣の存在を認めることは無かった。敵対する軍のどちらにも所属せず、ただただその牙と爪で戦車を破壊する力は脅威以外のの何物でもないからだ。かつて獣と意思の疎通を行うのは困難であり、不可能と言われていたため、戦力として期待することはなかった。人とポケモンは戦争する上で獣を刺激しないように行っていたものだが、近年武器の技術と共に威力が上昇するようになると、脅威は次々に駆逐されるようになった。今や数えるほどになってしまった狼は散り散りになり森で細々と生活していたのだが、クロが彼等を戦力として迎え入れたのだった。その背景には革新的なクローン技術による狼との意思疎通の可能にあったという。
ハップスは背にクロとシロを乗せると、仲間の狼を左右と後ろに1匹ずつ合計で3匹を護衛に充てさせた。霧に向かう間にも何が起こるかわからない世界で、この巨大な狼は重要な移動役だった。人はおろか生半可なポケモンですら一撃で地へと葬り去る爪と牙を持ち、敵の大群と遭遇した時には一瞬で逃げられるほどの脚を持つ。その前に敏感な鼻と耳で敵を察知し、さっさと迂回してしまうのだが。
「とは言え、クロさん…あんたは狼すら殺す力を持っているだろう。こんな面倒なことをするのは、やはり理解ができない」
クツクツと笑って、クロがふさふさの毛並みを撫でた。
「すまないな、ハップス。獣は力が全てだ。が、人は違う。立場を決めるのは、多くの要因が付き纏う。それは名誉であったり…」
「わかってるよ。だが、あんたとシロなら此処まで護衛を着けてでも運ぶ気になれるさ」
牙を鳴らしてハップスが笑う。
獣は今や人やポケモンと同等の存在となりつつある。そのことに感謝を込めた言い方のように取ることができた。
「君主…か。誰もあんたに逆らうことができんよ。少なくとも、我々とあんたの指示する軍がバックについてる間はね。」
独り言のように狼が呟いた。
クロが向かう先は霧。そして、仲間の元である。

「…どうやら犬用のベッドを用意して正解だったようですねぇ、アイ艦長」
「読みを超えた大きさですがね…解せません」
「単なるジョークだよ。ハップスは置いていく。…同行するのは俺とシロだけだ」
クハハッと牙を鳴らすクロにレノードとアイは渋い表情を浮かべる。
ハップスに別れの言葉を告げて、霧に消えた後アイの転送の指示で島から一瞬で消えた。
乗船から2時間。ケルドの検査結果が出た。
「アイ艦長。ケルド乗組員に霊感や特別な能力が付加されているとは考えられません」
「…その根拠は?」
シロの言葉に冷静な表情で対応するアイ。傍らにはケルド、レノード、クロの姿があった。
「ケルドは大きな手術の成功者です。無論、普通の患者よりも多くの検査を行い、注意深く観察してきました。他にも通常時のガブリアスの検査データの値があります…が、それら全てとなんら変わらず、また、検査前、検査後のデータと今回の検査データを比較しても特に目を疑うような変化は認められませんでした。…とするならば、患者であるケルドの以前から霊感がないという証言を信じざるをえません」
「ちょっと待て!だが――」立ち上がり叫ぶのは、ケルドであった。「俺は確かに見たんだ!」
食い違う事実と証言にアイも困惑を隠せない。
落ち着け、ケルド。とクロが宥める。
「クロさん…」
レノードがそんなクロを見遣って、薄く笑う。
「頼みますよ。事実を発見出来るのは…きっと貴方でしょうから」

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プロフィール
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年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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