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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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赴く前に 20110421


 カムイさんが僕の動向に気付いたらしい。姉さんがそう話してくれた。
 カムイさんは僕らがこの戦争に赴くことを良く思っていないらしい。話を聞けば姉さんの話し方も少し不味い点があるかもしれないけど、僕自身はカムイさんがそうやって怒ってくれたことにとても感謝している。彼は心配性だから、きっと僕らを失ったり怪我をしたりするのが我慢ならないのだろう。出来ることなら少し時間を作って、カムイさんや皆と会いたい。
 僕自身、あんな戦場に行くのは嫌だ。
 戦場で戦ってる仲間がいるからそんな泣き言を言えやしないけど、心の中ではそう思ってる。僕は後方で運ばれてきた患者を診る、それがいいのに。
 何が好きで銃弾や砲撃の飛び交う戦場に行かなければならないのだろう。
 必要な仕事だと分かっていても、前線移動の前ではいつもこんな憂鬱な気持ちになる。僕は必要最低限な仕事だけをこなし、部屋に数日間閉じこもっていた。
 そんな時、ポケナビが鳴った。
「……もしもし」
「シロ、相談したいことがあるんだが。少しご足労頂けないだろうか。第23研究室で待っている」
 有無を言わさない言葉遣いで電話口の相手はそう言い放ち、通話を一方的にシャットアウトした。僕はすぐに大きなため息を吐いてベッドから起きあがった。

 スピネットは医者だけど、化学系の研究者でもあった。今回の謎の敵を調査する役目を貰っていたはずだ。確かに何かあった時、彼はクロよりも僕の事を呼び出す事が多い。同じ医者の先輩後輩同士で気がしれているのもあったけど、それよりも彼曰く「馬鹿とは話したくない」だそうだ。
 寝癖を直し、顔を洗ってから自室を出た。長い廊下を歩き、エレベーターを目指す。
 ヴォルフシャンフェは軍の秘密基地のようなものだ。当然のように新型兵器の格納庫まであるし、最先端の研究もここで行われている。何より、今朝の新聞で報道はされてしまったものの、重要な秘密を隠しておくにはこれ以上ない秘密の場所だ。
 第23研究室の扉はすぐに開いた。薄暗い、乱雑した其処にテーブルを挟んで誰かと話す白衣姿のルカリオがいた。彼こそがスピネットである。
「……遅かったな」
 視線を軽くこちらへ飛ばしてくる。それの主成分には軽蔑すらも含まれていた。
 有無を言わせぬこの口調にかなり帰りたくなるものの、ひとまず瓦礫のように積み重なった謎の研究物の中から椅子を発見したのでそれを引っ張り出して机へと向かった。
「ごめんね、身支度を整えるのに時間が掛って」
「まぁ、いい。 ……紹介しよう、キルディア社のアイッシュ博士だ」
 キルディア社と言えば、かなり大規模な会社だ。その会社で取り扱っているものは、高分子材料だ。簡単に説明すると、ペットボトルからパソコン、マウスに至るまで身の回りのプラスチックという材料の取り扱い、研究は多くの企業を差し置いて業界シェア六割を超えているとか聞いたことがある。
「アイッシュだ」
 大柄のダイゲンキが前脚を差し出してきた。見上げるように視線を移し、その脚を軽く取って自己紹介を交わした。
 そして、再びスピネットが切り出す。
「”モノラル”と名付けた。……敵はこの生き物だ」
 スピネットが手に取り落としたそれは明らかに無機物の音を発した。しかし、スピネットは確かにそう言った。「生き物」だと。
「……これはどう見ても機械じゃないのかな」
「逆に問おう。生き物とは何かね?」
 アイッシュが毒々しいスピネットの言い草とは対照的に、紳士らしい口調で優しげに問いかけた。
 その言葉の優しさは分かるが、質問の回答はかなり迷うものだ。僕は一瞬言葉を止め、思考に専念した。
「……多くの定義があると思いますが、生き物最大の特徴は”意思を持つか否か”です」
 今では草花から微生物まですべての生き物に”意思を持つ”という結果が出ている。その結果を利用した回答だ。
「エクセレント! 流石お医者様だね。 その定義なら」
「この機械のような物質に、意思が存在すると?」
 僕は窺わしさを拭えずに居た。
 目前に転がっているのはどう見ても透明で、かつ金属音のする物質だ。
 叩けば金属音の響く生き物も居る。透明になる生き物も居る。だが、僕の常識の中で透明な金属など聞いたこともない。ましてや、それが生き物であるなどにわかに信じ難いのだ。
「……もう少し説明しよう。コイツは未知の場所からやってきた、未知なる存在だと思って聞いてほしい。頭にある今までの常識や価値観を全て空っぽにして、だ」
 スピネットの言葉に小さく僕は頷いた。そして、ようやく持って来た椅子に腰掛ける。
「コイツは合金と知能を兼ね備えたゲルで出来ている。姿は千差万別だが、ガブリアスやボーマンダ等比較的強い進化系ポケモンであることが多いようだ。その飛行能力や運動能力は通常のポケモンとなんら変わらない。合金は実態は不明だが、俺達の世界で使ってる材料に最も近いのはPC…ポリカーボネートと呼ばれる材料だ。高い耐熱、耐衝撃、そして透明性を持っている。最も、コイツはPCと比べものにならないほど強い。耐熱、耐衝撃に関しては合金にも勝る。リザードンの炎にも耐えるし、バンギラスのパンチにもびくともしない。おまけに電撃は吸収され、致命傷には至らない。水圧はいわずがもな…だ」
「簡単に言えば、防御は完璧ということかな」
 スピネットの早い説明に対し、意味が全く分かっていなかったシロにとって、アイッシュの最後のアドバイスは頼もしかった。
「そして攻撃だが…こいつらは強力な王水、毒、電撃。そして、サイコキネシスを操る」
 王水とは酸の一種だ。濃塩酸と濃硝酸を3対1で混ぜたものであり、その威力は最も溶けにくいと言われている金、白金まで溶かすと言われている。最強の酸であり、人やポケモンがそれを浴びればたちどころに身体が溶けて苦しみながら死に至るだろう。
「こいつらは、僕等が蛋白質主体の生物であることを知ってるのかもしれない」
「着眼点が良いね、シロ」
 アイッシュが小さく頷き、モノラルのかけらを前脚で弄りながら言う。
「彼等は皆こういう生き物で、そのまま進化してきたとしたら…私達に対して王水や電撃等を使う事はない。彼等の常識でそれは通用しない武器だからだ。それなのに、狙いを定めたようにこのような武器を使うということは…」
「相手も僕等の存在を知っている。そして、僕等を最も合理的に、かつ楽に殺しに来た」
 エクセレント!アイッシュは満足げに頷いた。
「また、このモノラルには面白いモノもあるんだ。…これを見てほしい」
 と、続けて取り出されたのは一枚の写真だった。顕微鏡越しの写真らしく、円の司会の中にむさらき色の細胞が無数に散らばっている。だが、その中心にある細胞は見慣れない細胞を発見した。ご存知のように主成分はメタモンの細胞から成り立っているが、写真の中央部には見慣れない細胞が写り混んでいる。
「この細胞が存在することによって、こいつらは強力なサイコキネシスを放つことができる。」
シロはその細胞に妙な引っ掛かりを覚えていた。
この細胞、シロはどこかで見たことがあるのだ。

ずっと昔。どこかで。

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プロフィール
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年齢:
33
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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