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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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五月の雪(20100508 )


 五月だというのに雪が降った。南から冷気を伴って吹きつける風が身に沁みて筋繊維が否応なしに収縮するのを感じる。僕はラティオスとしての血も混じっているということで、寒さには滅法弱い。こんな気温は苦手だった。
 リヴェアの街は現在街としての機能を果たしていない。元々は同盟国、フェリオンに所属する中規模の街だったのだが、今や戦争による破壊により街は瓦礫の山と化していた。また、現在はこの街で暮らしていた人々は後方の街へと集団で退避したため、この街に居るのはシティ国軍第2竜騎士師団だけだ。
 朝は粉雪だった街も昼を回ると牡丹雪となり、雪の止む気配は無いがかすかに気温が上がったようにも思えた。
 僕は今、街の郊外に着陸した補給部隊からの医薬品を受け取り、部下にそれを託すと今後どのように貴重な医薬品を使うかの分配を考えながら街の教会へと向かっていた。
 すでにこの街の診療所は壊れたか、重症の患者で受け入れができない状況から、新しく教会を診療所として使うこととなったのだ。
 道にうっすらと積もった雪を掻くための巨大な牽引車を引くのは、やはり巨大な灰色のドラゴンだった。道によけて彼を見上げると、鼻から熱そうな白い呼気
をぶふふ、と鳴らしながら僕を見下ろしてにんまりと笑った。ドラゴンの背中に跨る男の竜騎士は僕の姿を見るなり敬礼をした。小さくため息を吐きかけながら、僕も敬礼を返す。そのまま、彼らが道の向こうまで行ってしまうのを見送ってから、また歩き出す。
 金属の謎の生命体、モノラルとの戦いは激しさを増す一方だった。
 研究の結果、モノラルとポケモンを戦わせることは非常に不利なことであることが判明した。軍のトップに立つクロは軍に大きな方向転換を命じたのだ。その内容は至ってシンプルなものだった。ポケモンは内地へと戻り、輸送任務に徹する。或いは、ドラゴンを中心とする部隊の補佐に回らせた。一方でドラゴンを中心とする部隊である竜騎士隊は前線へと次々と輸送されていくこととなる。この決断はポケモンの部隊を指揮する何名かの指揮官の反感を買ったようだが、結局クロの言う事に決定された。力のある者が決定権を得るのは、人も獣も同じなんだな、と心の中で思う。
 結局、軍医大隊長の名を背負う自分にとって、ドラゴン中心の戦闘だろうがポケモン中心の戦闘だろうが、関係ないのだ。命を追う事を命じられた僕らは、自分たちの力と知識を使って一人でも犠牲者を減らす事を第一に考えなければならない。閣議で一通りの結論に至った後、それまで黙ってはいたものの、吠えるように支援物資の確保と過剰なまでの供給を僕は求めた。
 そうこうしている間に、教会が見えた。診察を受けて戻る少女を横目に、僕は扉を開いて中へと進んだ。
 沢山あった長椅子はすべて取り払われ、床に毛布を敷いて即席のベッドとして診療所として機能させる。その即席のベッドにはまだけが人は少ないものの、そのうち此処も足の踏み場もなくなるのだろう。ドラゴンという友を無くし、自分だけ生き残った少年のすすり泣く声が静かに教会に響き渡った。
 此処では、悲しみと悲しみの連鎖しかない。
 僕が教会の奥……元々司祭の控室だった部屋。今は軍医達の控室になっている……その部屋へ入った。
「おかえりなさい、隊長。薬は予想よりずっと多かったですよ」
 と、僕とまったく同じ、濃い緑色の戦闘服に大きな赤十字のマークを付けた青年が言う。
 彼は中隊の班長だった。
「ただいま。 ……そうだね。でも、医薬品は幾らあってもそのうち足りなくなる。倉庫の中には詰め込めるだけの医薬品を詰め込んでおいてください。どんなに大きなドラゴンでも治療ができるように、です」
 はい、と班長が軽く微笑んだ。彼は僕より年上だが、気さくで僕が彼よりも上の立場であることを恨んだりしていない青年だ。僕は彼の事が好きだし、彼も僕を好んでるように思う。わずかに取れる食事の時間も共に過ごし、お互いに医療の話をしながらの食事がここでの日課となっている。
 彼は、医者になったらすぐに教員免許を取るそうだ。子供に医療を学んでほしいのだと言う。そして、できうる事なら僕らと同じ、軍医になってもらいたいのだと。
 彼なら丁寧で、優しい指導ができる。医療を学ぶ者に有りがちな小手先だけのオペの仕方を教えるのでなく、病気と向き合うような姿勢を教えられるのも彼だけなのだろう。
 僕は、その機会がなくなってしまった。
 残念な事だけれども、彼が選んだ道なのだから仕方ない。そう思う反面、まだ諦めきれない気持ちもあった。
 僕に何か、出来ることがあるのだろうか。
「…隊長。どうしました、気分が優れませんか?」
 目の前の彼がぼんやりと考え込む僕を心配して声を掛けてくれていた。はっ、と気付くと首を左右に振って。
「大丈夫だよ」
「そうですか…それなら良かったです。そういえば、物資に紛れて手紙が届いてましたよ」
 隊長宛てです。と彼は懐から封筒を取り出し、差し出した。
「…私と同じ腹から生まれた者より?」
 確かに宛名は僕で間違いなかった。しかし、差出人の名前は書かれておらず、そんな意味深な一言が添えられていた。
 牡丹雪がまた粉雪に変わった頃、シロは手紙の封を破った。

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プロフィール
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年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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