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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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SS.繋がりの話

太陽が昇りはじめた地平線まで遥かに広がる大地を見下ろして、その少女は空を駆ける。
正確には彼女が飛んでいるわけではない。オレンジの表皮に身を包み背中には発達した巨大な翼、そしてその生き物の腰部から生える太くしなやかな表皮と同色の尻尾があり、その尻尾の先は青白い炎が宿っていた。リザードン--そう呼ばれる種族のポケモンの背中に彼女は居た。
「右へ旋回して急降下!」
指示を飛ばすとリザードンは返答せずに右翼と頭を下げ下方に飛んだ。
それから振り飛ばされんと身を屈める彼女の身体は細いが、その全身には紅い鎧で固められているためそうは見えない。そしてその背中には一対の紅い翼と、およそ人間が使うにはあまりにも大きすぎる斧が鎮座していた。
急降下で着陸体制に入ったリザードンは通常二足歩行を行うため身体を引き上げ、翼を一杯に広げて空気抵抗による減速を行い着地をする。
背中に居た彼女は、リザードンが身体を引き上げる頃にはすでにその背中からは飛び降りていた。
「ナイスフライトよ、ラルド」
「そりゃどうも。レシフィール様?」
レシフィールと呼ばれた彼女はラルドのジト目に苦笑で答えた。
「……しかし、まさかこんなに朝っぱらから散歩に出掛けさせられるとは思わなかったぜ。相棒はどうしたんだよ」
「あら、ガルクに嫉妬?」
くぁ、と欠伸を零してラルドはぶつくさと呟いた。まだ眠いように軽く息を吐いた後、首を振る。
レシフィールはそんなラルドの様子を見上げた。
「でもね、ガルクは訳あって暫く別行動を取ろうって。……そういうことにしたの」
「……お前から切り出したのか?」
その問いに彼女は頷き、ラルドはふぅん……と適当な返事。それ以上問おうともしない。
そして、数秒の沈黙。
「……ちょっとね」
彼女はそれだけを言うと、草原の波を駆ける。
背中の斧を振り上げ見えない敵とのシャドーを始める。
「……何があったんだよ。一体全体」
何も知らないラルドは彼女の背中を見て呟いた。
ラルドは元々レシフィールの手持ちポケモンだが、習慣的にMBに入ってはいない。当然のように外をのし歩き、別の兵士の手持ちのポケモンと駄弁ったり、バトルをしたりする。故に彼女の変化には気付けど、些細な事までは彼女の口から聞かなければわからない。
だが、レシフィールがあぁ見えて頑固な事はよく知っていた。頑なに話さないと言い張ればラルド程屈強なリザードンが相手でも、吐かせるのは難しいだろう。
ならば、ガルクか……そんなことを考えつつ半ば無意識に手を翼に触れていた。
その行為を、レシフィールは見逃すことは無かった。



戦争が無い時は、それなりに俺達も楽ができる。そうしみじみと実感できるのは一人で火薬の臭いのしない大空をのんびりと飛んでいる時と、旨いものを喰っている時だ。
今そう実感できるのは眼下に広がる雲を横目に大空を舞っているからだ。
翼を振るい、速度を維持すると、その空気に若干の硫黄の臭いが混ざっているのを感じた。
それは目的の火山が近いことを意味するため、俺はレシフィールに言われたように高度を落としていく。
雲を突き破ると、うっすらと煙が立ち上る険しい火山が前方に見え、長い飛行は間もなく終わることを悟った。
大きく旋回し、すり鉢状に凹んだ火口へと近づいていく。炎タイプか、熱に強い地面タイプでもなければ一瞬で蒸発してしまいそうなほどの熱気が俺にとって気持ち良かった。
「さぁて……」
至る所で溶岩がうごめき、ガスが岩の裂け目から噴出し白く空気を濁らせている。視界が効かないその状況で五感をフルに使って目的の者を探す。
だが、その行為を行った瞬間にもうそれが必要無いことを感じる。
大地が奮えると、ラルドは一気に空へ舞い上がった。
一瞬を置いてそこから溶岩と共に噴出する巨体の姿。
人間が竜と呼ぶそれは、どのポケモンよりも大きい巨体を持ち、ラルドを噛み付かんと迫る。
だが紙一重で飛翔するラルドは竜の鋭利なる牙から逃れる事に成功した。
ほんの挨拶代わり……どうせそう言うのだろうがあまりにも手荒い。死んでも可笑しくないその挨拶に思わず背中からは汗が一滴滴った。
「ほんの挨拶代わりよ、ラルド」
竜はそう唸る。
「久しいな、ドル……いつぞやの作戦以来だな」
ドルと呼ばれた竜はジロリとラルドを金色の目で見上げた。
ドルは竜の中でも極めて大きく、力も強い。火口等の熱い場所を好む種族である。個体数は極めて少ない竜だ。
外見は、大地を太い四足で掴み、背中には太く鋭い刺がある。一番高い刺までは地面から7、8メートルはあるだろう。身体を覆う鱗は紅と黒を混ぜ合わせたような不気味な色だ。
「全くだ。あの時の戦闘は……退屈なものだった」
一週間程前にある同盟都市近くで戦闘が巻き起こった。同盟国は不意を突かれ奇襲されるという最悪の事態だったために、偶然通り掛かったレシフィールとラルド一行。そしてはたまた偶然居合わせたドルが交戦に入り込み、あっという間に鎮圧……という出来事があった。
「まるで俺達が居なくても勝てたような言い草じゃないか」
「参戦することは構わんよ。レシフィールは私を邪魔しないように立ち回ってくれる……だが、如何せん獲物が減るという事実は避けられないだろう」
要するに俺達がいなくても勝てたと遠回しに言いたいらしい。
実際ドルの圧倒的な巨体は見ただけで生身の人間なら驚愕し、武器を持つ手から冷や汗が流れるだろう。
それはこの世界に生きる人間全てに刻まれた本能の行為なのだから。
「そりゃ悪かったな。今度は一人で獲物を探して仕留めな」
「あぁ、そうしよう。……で、何の用事だ?」
そうそう、本題を話すことをすっかりと忘れていた。
改めてドルの大きな瞳を見据えて、一つ咳ばらいをした後で話しはじめる。
「ガルクは居ないのか?アイツと暫く話してないから、会いに来たんだ」
「……俺目的じゃなかったのか」
男相手なわけねぇじゃん!口まで出かけて止めるラルド。
「まぁ、別に構わんけどな。ガルクなら、最近は見掛けていないな……何でも、義理の弟が出来たのだとか」
「義理の……弟?」
初めて聞くその単語に思わず首を傾げる。
あぁ、と軽くドルは頷き続けた。
「名前はジュンというらしい。遠くからその姿を一度見たが、それはそれは小さいボーマンダだった。だが、その姿を守るかのようにガルクは隣に居た……恐らく、何か彼の事で悩んでるのではないか?」
「ちょっと待てよ。レシフィールはそんな話しなかったぞ?」
俺達はフリーを許されるが故に、常に言葉でコンタクトをとらなければならない。
双方の事を知らなければ、いざという時に100%の力を発揮することができないからだ。
だが、レシフィールはそんなことを言わなかった。
「お前には関係ないと思われたか……或は、結論を出させてないか」
そのどちらかじゃないのか?
ドルの言葉に何か不安感が過ぎった。
最近は行わなかったレシフィールを背中に乗せてでの飛行訓練。それはその役をガルクに取られているからだ。
ガルクが仮に居なくなるとしたら……?
「恐らく、まだ結果を出せていない。だが……アイツは俺達から逃げようとしているんだ」
無意識に拳を固めていた。見たことは無いが、そのボーマンダと寄り添って生きていくという結論を出しかけて居るなら、ぶん殴ってでも止めなければならないだろう。
「アイツは……アイツはレシフィールを……俺達を捨てるのか?どれだけの付き合いだと思っている!こんな簡単に決着がついてたまるか!」
「ラルド……落ち着け。まだ決まったわけではないのだ。互いに悪い方に考えすぎている」
ドルがぐるぅ……と喉を低く鳴らして唸った。
「先ずはレシフィールとガルクに話を聞く事が先決だ。話さなければ、何も解りはしない」
ラルドは強く頷き同意した。
そして、すぐに二人は行動に入った。
ドルは火山から走りはじめ、ラルドは翼を広げて大空へ。
いつの間にか、空は茜色に染まっていた。

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プロフィール
HN:
年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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