「馬鹿な！ガランディアが同盟を破棄しただと！？」
「冗談ではない。破棄と同時に宣戦布告……どうやら、シティがガランディアに何かしたのだろう」
クロはポケナビに映る金髪の青年を睨み付けた。
数時間前の事だ。クロの居る前線基地No13から西へ竜の背中で丸一日行った所にガランディアという同盟を結んだ国家があった。
シティの起こす非人道的な人間とポケモンの扱いから、宗教的な理由でガランディアはシティに対して同盟を結ぶことは無く、代わりにシティから捨てられたクロ達と同盟を組んでいた。
シティは強大な国家だ。国の広大さも、資源の豊富さも、科学技術の高さも何一つとして周辺の国に負けることは無い。
だからこそ、周辺の国家はシティとの関わりをひどく気にしている。
ガランディアを始めとする大抵の国家はクロ達の組織と同盟を組み、自らの国家が兵を出さない代わりに少ない資源や武器の調達等クロ達の組織のバックアップに専念することでお互いの利益が一致する。
しかし、その同盟国の１つであるガランディアがたった今掌を返し同盟を破棄。代わりに宣戦布告という行動に躍り出たのだ。
クロもその行為に驚きを隠せなかった。
ガランディアは組織の同盟の中で最大の国……言わば、生命線と言ってもいい。そんな国家なのだ。
「西北の青葉０５６７では現在でも激しい攻防が続いている。No02は壊滅状態に陥り、我々No07でもこの戦いを止めることは不可能だと判断する」
金髪の青年が言った。
「判っている……今から足の速い騎士隊を向かわせる。あと６時間の辛抱だ」
「No13の騎士隊といえば、最強の竜が何体も居ることで有名だ。頼りになるねぇ……あぁ、ついでに医薬品と補給も頼む。こっちは戦闘が始まる寸前にガランディアから物資の配給を受ける予定だったからさ」
「……了解した」
通信が途切れ、静寂が訪れた。クロは１つ大きな息を吐くと、テーブルの上の地図に視線を向ける。戦闘の起きている場所には多くの友軍が居るが、単純な数を数えるならばガランディアの軍は友軍の２倍ないし３倍だ。戦闘は数が多い程有利に進むのは誰でも判ることだ。
その場所に、既に飛び立った者が居る。
レシフィールの率いる飛竜部隊が激戦を制すために、大空の乾いた空気を切り裂いていた。

「でもね。人間なんてちっぽけな生き物なんだよ。頭が良いからって、沢山人を殺すための武器を作って、持って強くなった『気分』に浸るんだ」

その竜は呟いた。

「だから、これは僕なりの人間に対する接し方の１つだと思ってくれると嬉しいな」
「それは、間違ってないと思うぞ。　……トール」
「否定はしねぇな……むしろ、同意だ」

大地が震えた。
竜が吼え、高らかにその巨躯に刻まれた力を解放する。
勝利の雷神――そう名付けられた竜は、数多の犠牲と共にある。

「だから、虫唾が走るんだよ。武器を持つポケモンや、人間はさ」
「その答えがこの破壊行為か……悪くねーよ。この見映えも」
「個々で正義はぶつかり合う。だからこそ、力のあるものが勝つのは道理だろう？」

それまで存在していた森が、街が、山が。地平線まで続く１つの焼け野原と化する。
その亡骸に味方も、敵も居ない。
ただ自分の信じるべき人間を守り抜くために行なった。
ガルク、ギディオン、ヴィクトールはその光景を作り出し、その光景を見て、笑った。
 

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