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Cloudy――朝焼けの空
こんにちは。此処はKの運営するブログです。ポケモン系なりきりチャット「カフェパーティ」を知らない方、なりちゃ成分に抵抗がある方はブラウザバックを推奨します。

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爪痕と祠と竜伝説の幕開け



「……こりゃヒデェな」
「まさに神の織り成す技でしょう?」


リヴェスはキメイラの言葉をまるで信用していないかのような口振りで笑みを浮かべていたが、確かに彼は見たのだ。この大地を裂く、巨大な爪を。
早朝。太陽がゆっくりと大地を暖めていく。前日に降っていた雪もすっかりと止んで、空は雲1つ無い快晴で、霧も出ていない。
リヴェルアの城に隣接した城壁の見張り台の上で、キメイラは昨夜の惨状を目の当りにして言葉を失った。
ただ眼下に広がっているのは裂けた大地が広がり、その傍で一瞬にして大量の同志を亡くした敵の兵士がぼんやりとしているのを見た。

「もう敵は満身創痍……というより、戦う気力も失っているでしょう。放っておけば国へと帰るでしょうね」

昨夜から作戦会議が開かれ、眠っていないはずのリヴェスはそれでも疲れたような表情を見せずに眼下に広がる光景を眺めて、そう口にした。
キメイラは元々ブラッキーなのでこの時間でも眠くは無い。

「そうだな。無駄な殺生はする必要が無いだろうさ。 ……それより」
「えぇ、解っています。昨日の竜の伝説でしょう? ただ話すのも面白みが無いので、この近くの祠を見ながら説明しますよ」

どうぞ、此方へ。その言葉と共にキメイラとリヴェスは移動を始める。
キメイラも身分は霧を抜ければ王子だ。城の広さには慣れているが、そのキメイラですら広いと感じる城の内部を歩く。
城に仕える女性の何人かを会釈を交わした。
どうやら城の中だけでも人間と獣人が上手く折り合いを重ねて生活しているらしいことは一目でわかった。
どこか、故郷の城を思い出させる。
そう、居ないとすれば……

「そういやよ、この城には竜は居ないのかい?」

キメイラの問いに歩きながら目を細めるリヴェス。

「……残念ながら、この周辺は寒すぎるのです。また、過去に私達の積み上げてきた歴史の中で竜は戦いに巻き込まれるのを避けるために、この周辺から居なくなったようです」
「……ふぅん」

確かにこの気温で竜が生活するのは難しいのかもしれない。
だが、なんとなくリヴェスの言い草に何かが引っかかるのだ。
その理由はまた別の所にあるのかもしれない。それを、隠そうとしているような雰囲気が漂っていた。
しかし、それを確かめる前に目的の場所にたどり着いてしまったようだ。
城の庭。雪が薄く積まれた草の上に眠る、大きな純白の狼。背中まで軽く2,3メートルはありそうで、人くらいなら軽く丸呑みできそうだ。
そんな彼は、キメイラ達の接近に気付き瞳を開けた。

「おはようございます、リヴェス様」
「おはよう、シャーク。……あぁ、こっちはキメイラだよ」

キメイラは軽く会釈をし、シャークもそれに続いてぺこりと鼻先を下げた。
そして、シャークはすんすんとキメイラの匂いを嗅ぎ、覚える。狼としての習性なのかもしれない。

「……そして、今日はどちらへ?」
「祠へ行きたいんだけど、良いかな?」
「構いませんよ。どうぞ、背中へ」

ありがとう、とリヴェスはシャークの首筋を背伸びして撫でてやる。
キメイラも軽く一礼してから背中へと飛び乗った。

「……特等席だな、こりゃw」
「ふふっ、良い毛並みでしょう?私達は彼らの力を借りて共に生きているんですよ」
「では、出発しますね。振り落とされないように十分に気をつけてください」

シャークは立ち上がると、一気に城壁を飛び越えた。
国の外は平野が広がり、人間が歩くには少々雪が深く歩くのに苦労しそうだがシャークにとってそんなものは関係なかった。風を追い抜かんばかりのスピードで前へと突き進む。
背中の温かみとリヴェスの魔法によって寒くは無い。
白の平野だった景色はいつしか変わり、遠くに見えていた山のふもとへとやってきた。
そして、森の始まりに辿り着くとシャークは走るのをやめて歩き始める。

「もう間も無くですよ。祠と、それに関わる伝説が残されています」
「そりゃ、楽しみだねぇ」

シャークはかなりの距離を走ってきたはずだが、息一つ切らさずに解説を挟んだ。
森をゆっくりとした歩みで進むシャーク。
やがて現れたのは1つの立派な祠。それを正面に見て左側に台座のような岩に、大きな楕円形の石像が1つ。右側には立派な竜を催した石像があった。
あまり生き物が踏み込まない場所なのか、その場所の雪は荒らされていない。
そして石像にも雪が積もっていた。
キメイラはシャークの背中から飛び降りると、先ず竜の石像へと向かった。
真っ先に手の爪を見遣る。

「……どうですか、昨晩見た爪と似ていますか?」
「……いや、俺が見た爪はもっと形が違うんだが……」

この爪で大地を切り裂いていたのではないのか……?
キメイラの頭にそんな考えが浮かんでは消える。ひょっとしたら、疲れていて見えたのかもしれないな……なんて思いつつ、台座の雪を払う。
そして、雪が退けられた中から小さな何かが出てきた。

「……なんだこりゃ」
「竜と人間の比較でしょう。 ……もっとも、彼から見たら私達人間と白狼の違いなんて其処まで無いようですね」

何百メートルの大きさから見下ろせば、たかが1,2メートルなど小さなもの。
大きさと存在感が圧倒的に違う。なるほど、確かに此処まで大きければ伝説として崇められても当然だろう。
そして、キメイラは気がついた。

「……まさか」

そう、これほど大きな竜ならば大地を裂くのは手ではなく寧ろ、脚の爪なのだ。
鋭利なその爪は間違いない。昨晩見たそれだった。

「脚の爪……ですか」
「あぁ、間違いない。昨日見たものと一致する」

目に焼き付けたそれを語るキメイラの言葉が、少しずつ熱くなる。
この伝説と称される竜を見る事は、冒険者として胸の高鳴りを感じることだから。
そして、祠を見上げた瞬間だ。
トクン、と普段感じない心臓の音がキメイラを突いた。
普段と違う感覚。思わず周囲を見渡した。
だが、自分とシャーク、リヴェスを除いて呼吸をするものは周囲には居ない。
まるで感じたことの無い感覚。遠くからも近くからも見られているような。それでいて敵意は無いような、言葉に形容できない感覚。
そして、鼓動の高鳴りは続いた。

「……どうしました?」
「いや、なんでもねぇ……」

何も感じていないのか、リヴェスが首を傾げてキメイラに問い掛ける。
しかし彼よりも感覚は何十倍も鋭いであろうシャークでさえも首を傾げてキメイラの反応に首を傾げていた。

その後、帰路に着く中でもキメイラの鼓動の大きさは治ることは無かった。

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34
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男性
誕生日:
1990/04/05
職業:
大学生
趣味:
野球・ポケモン
自己紹介:
Kです。
いろいろ生真面目な事を書くと疲れると思うんで、箇条書きでいいですか?いいですよね。

・野球とポケモンが好きです。
・野球はキャッチャーやってました。ミットを持つと人間が変わるとよく言われます(笑
・ポケモンはラプラス、バクフーン、ラティオス辺りが好み。
・すごくカッコイイかすごくカワイイが好き(笑
・カフェパのプロフナンバーは4。
・芸能人の三浦春馬と全く同じ日に生まれる。雲泥の年収差があってちょっと泣ける←
・音楽も好きです。
・好きなバンドはBIGMAMAとBUMP OF CHICKEN。
・他にも色々ありますが、一番好きなのはこの2つ。


こんなやつです。仲良くしてやってください。
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