戦争が終って３日目の朝のこと。

ＳＳも今回からはこっちに書いていくつもり。
今回は短めなのはお試しだからです。

巷ではキャラの好きな順番を決めるゲームみたいなのがありますけど、俺はやらん。
好き嫌いというか、関われるＰＣは色々状況によって変わるわけだし、皆の心の中で決めてくれればそれでいいよ。

　鮮やかに彩られた世界は、普段と違って見えた。
　戦争が終るとは思っても見なかった。信じられないという気持ちが強く、心の何処かで明日の朝日と共に爆弾を
満載した竜が飛んでくるのではないかと疑っていた。
　クロが目を覚ましたのは翌朝の４時半。太陽はまだ出ていないこの時間は門兵の見張り交代の時間。
　長い前髪に手をやって小さく欠伸をすると背中に一対の翼が生まれ、シャツの上に漆黒の皮製服――夜戦戦闘服
を羽織り、太いベルトを止める。そしてクロの身体の一部とも言うべきＳライフルはロッカーに６丁。戦闘を想定
していないので、軽いものを選んで背負い外へ向かう。
　季節は９月になり急激に涼しくなった。そして、霧が出ている。あの島へ向かうために抜ける霧と同じくらい濃
い霧が発生していた。
　門兵のバンギラスがうっすらと見え始める。クロの姿を確認すると、持っている人間では到底持つことの出来な
い巨大な銃を下ろし敬礼した。
　クロはそれを見て、敬礼を返した。



「おはようございます、クロさん」


「よぉ、ヴェイラ。敵さん、攻めて来たか？」


「また冗談を……戦争は終結したのをお忘れですか？」



　ヴェイラと呼ばれたバンギラスは銃を持って前で構えて、休めの体勢を取りそう笑って見せた。



「……いや、実感がわかなくてな」


「クロさんの目の前で、代表が降伏書にサインをしたのでしょう？　恐らく、まだ実感していないのは我々部下の大半だと思います」



　調印が２日前。クロを始めとする将官数人が見守る中で行なわれ、確かにそれは終ったはずなのだ。
　それでも実感が湧かないのは、恐らくそれを想像できないからだろう。
　生まれた時から銃を持たされ、上官に殴られ震えていた日々を過ごしてきたクロにとって平和とは何か。その問
に答える事はできない。
　ただ、クロは島を見つけそこで色々な者を見てきた。自分と同世代の少年が学校と呼ばれる場所に通っている事
を知り、それを羨ましく見てきた。
　平和とはクロ達にとってパンドラの箱なのかもしれない。
　その箱を開けるのには勇気が必要だろう。



「……これから、お前はどうする？」


「は……自分ですか。そうですねぇ……自分には、妻と息子が居るので野生に戻ろうと思います。トレーナーもその事には納得してくれていますし、時には顔を見せに行くつもりです」



　ヴェイラは少し恥ずかしそうに答え、表情を緩ませる。



「良いじゃないか。暇を見つけてお前の息子を見に行ってもいいか？」


「大歓迎ですよ。息子はあまり戦闘が上手くないんで、キッチリと扱いてやってください」



　あぁ、と頷いてクロはヴェイラを見上げた。
　クロは指揮官として、今後の隊の事を考えなくてはならないと思っていたが、この返答を聞く限りではそこまで
深く考える必要は無いだろうと考えた。未来のことなど、皆考えているようだ。

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